気分と眠気によるリミッターの解除具合によってカオスができあがる。
途中までシリアス一辺倒だったのに一発でそれを崩壊させるトーマスクオリティ。
小さな妖精の受難曲ここに、一人の神官あり。
そのもの、忌み子として生まれ、それ故に迫害を受け、それでも今生きている。
そのもの、この迷宮にて、自らに課せられた運命を知る。
「俺か…。俺の名なんて、お前が知ったところで何になる」
”二つの神の声を聞くナイトメアの神官”……
「お前に課した呪いの刻印は、刻一刻とお前の中の穢れを増幅させるのだ。この俺を倒さぬ限りはな」
倒す。敵を。
それは、その行為は人族として、それとも蛮族として…?
「お前が生きたいと願う度、お前に刻んだ刻印が血を求めて騒ぎ出す」
そのものの命運尽きたかに思えたとき、一つの可能性がまた生まれる。
「お前はもう分かっているはずだ。お前が人族として生きていくことは、もはや叶わぬこと」
生きるために人を捨てるか。人としてあるために命を捨てるか。
「俺は…、俺は……ッ!」
究極の選択を、そのものは強いられる。
…研ぎ澄まされた刃が、切り裂くものは自分か、それとも……?小さな妖精の幻想歌そのエルフの少女は見てしまった。
仲間が変貌したその姿を。禍々しい悪鬼の姿を。
「もうやめろディスティル、勝負は付いただろ!」
少女の呼びかけにも応えず、ただ破壊のみを重ねる悪鬼。
耐え切れず、少女はその身を挺して悪鬼を止めに入る。
「違うよメイル。これは、この顔は…」
悪鬼の拳が少女を穿つ。殴られて、殴られ続けて、それでも少女は引く気を見せない。
「仲間を想う、男の顔だ」
少女の声が、悪鬼に届く。
そうして退けた悪鬼と、自ら退いていく竜人子爵。
その下の層の最深部で、少女は忘れ得ない二人と相対する。
「クライネ、君は守りたいものを守れるだけの力があることを、俺たちに示すんだ」
少女は、まだ完全に立ち上がれたわけではない。まだ歩き出せたわけではない。
「行くわよ、クライネ!」
だから、その二人はその背中を押すために現れた。
「……行くよ。父さん…、母さん…」
…過去が、希望を生み出すとき。
小さな妖精の賛美曲その迷宮の最深部。そこに、その魔剣は佇んでいた。
ただ一人、何者も辿りつくこと無しに。何千年。
しかし、そんな時は既に終わりを迎えようとしていた。
「我輩の試練を乗り越えしそなたらに、今一度、最期の試練を与えよう」
それは、自分の幻影。それが、最期の試練というのか。
エルフの少女の幻影は、執拗に少女の心に揺さぶりをかける。
「あんた、何にも分かってない。あんたにもとっくに、今私が使ったような力があるはずなのに、それを使おうともしない」
「要するに応用力が無い、って言ってんのよ。ちょっと考えればすぐに出来ることなのに、あんたは考えることをしていない。妖精とだって、あんたは深いところで理解しあってない」
「あんたはそれを否定してるけど、本当はドジなのをいいことに考えることを放棄してたんじゃない。それだから…」
「あんたは私に勝てないって言ってるのよ!」
その男の幻影は、自らの「基」に戦いを説く。
「戦いはなあ、爽快感溢れる、命と命の削りあいなんだよ。同時にそれは、自らが生きながらえるための手段だ。そこに他人の入れる余地なんかありはしねえ」
「逃げるなよ、正直になろうぜ。お前にもこの刻印があるじゃねえか。俺たちは全く同じ存在。だったら、俺の考えがてめえのなかにもあるはずだろうが!」
その少女の幻影は、何のために戦うのかを問いかける。
「ねえ、考えてみて。あなたが戦うのって、何のため?」
「どうして、こんなところにいるの?」
「生きるために戦うっていうのは、おかしくないかな。だって、都会に暮らしていれば、ずっと安全な生活が出来るのに。何でわざわざ自分から危険な場所に行くのかな?」
その人造人間の幻影は…真剣勝負を持ちかける。
『あなたが私と同じ存在ならば、私の考えていることが、あなたには分かる』
その人間の幻影は…。
「ピラー二刀流振り下ろしクリットオンラインこわい><」
「><」
「よけられないしぼくもう\(^o^)/オワタ」
そのエルフの幻影は…。
「…そう、ミラージュ。あなたには私がお見通し、というわけね」
それぞれの感情が交錯し、そして…。
「ここまで来たら何も言うまい。我輩が直々にそなたらの相手をしよう」
「さあ、我輩を打ち倒してみよ!」
…その魔剣を手にするのは、誰なのか。
…その答えは、風の中に消え行く。
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