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三日後。
クライネ、ディスティル、シュルヴェステル、オウルの四人は、冒険者の店の前で集まっていた。
「準備はできたか?」
「大丈夫大丈夫」
依頼書によれば、馬車はこの町の入り口にあるそうだ。ここからなら、今から出れば間に合うだろう。
予定は順調、何事もなく終わることを、その四人は願っていた。
しかし、それはあくまで希望であることには変わらなかった。
十時に町の入り口に着くはずの馬車が、予定時刻を過ぎても到着しないのだ。
「どうしたんだ。アイヤールからの荷物だろ?」
既に一刻が過ぎているのだが、いっこうに到着する気配を見せない。
更に一刻の後、ようやくその馬車は姿を現す。
「やっと来たか。遅いぜまったく」
馬車は彼らの目の前で停止する。
「すみませんね。少し予定が狂ったもので」
「まったく、ちゃんと仕事してくれよ?」
「ええ。わかっていますよ…」
彼らを乗せて、馬車は走り出す。
町がどんどん小さくなっていき、見えなくなった頃、ディスティルは遅れた理由を問いただした。
その問いに対して、男は馬車を止めた。
「途中で蛮族の襲撃に遭いましてね…」
そう言って、その男はにやりと笑い…。
「今頃あの世に行ってるよ!」
ディスティルを殴り飛ばし、馬車の外へ出た。それと同時に、荷台の方から三体の蛮族が飛び出してきた。
ディスティルは馬車から地面へと叩きつけられ、他の三人は蛮族に押さえつけられる。
「何だこいつら!」
ディスティルは起き上がる。
「てめえ、何者だ!」
男は一瞬にして、その姿を変える。身長三メートルの、蛮族の姿に。
男に成りすましていたのは「オーガ」という種類の蛮族だった。他の蛮族は「レッサーオーガ」と言った。
「ふん、お前に名乗る名など…ん、お前はあの時のナイトメアか」
男はディスティルの耳の聖印を見て言った。
どうやら、監獄を襲ったのはこのオーガらしい。
「穢れを持ちながらライフォスなんぞを信仰しおって。我らが神の方がお前が信仰する神によっぽど相応しいわ!」
オーガが吐き捨てるように言った。
「いや、待てよ。お前…」
そこまで言って、オーガは笑い出した。
ひとしきり笑った後、オーガはディスティルに襲い掛かった。
稲妻がディスティルの身体を貫き、ディスティルはその電撃に耐え切れず、地に肩膝をつく。
それと同じ頃、馬車の中で何かが切れる音と銃声がした。
魔力を帯びた剣がレッサーオーガを貫き、レッサーオーガはその痛みで失神する。銃弾がもう一体のレッサーオーガの左肩を貫いた。そして、もう一体は尻尾に殴りつけられ、馬車から転げ落ちる。
一瞬だったが、クライネ、シュルヴェステル、オウルの三人はレッサーオーガの束縛から逃れ、馬車の外へ出る。
その様子を見て、オーガは分が悪いと考えた。
「ちっ、ここまでやるとは計算外だった」
そう言って、オーガは逃げ始める。
「待て!」
ディスティルが追おうとするが、レッサーオーガ二体に阻まれる。
「邪魔だ、お前ら!」
ディスティルはレッサーオーガの攻撃をこくごとくかわし、左肩を怪我したレッサーオーガを殴る。
「ダメだ、ここからじゃあいつに当てられない…!」
シュルヴェステル、オウル、クライネはレッサーオーガたちに向かっていき、それぞれを攻撃する。
しかし、片がついた頃にはオーガは消えていた。
「逃げられたか…」
ディスティルが舌打ちする。
「それよりも、荷物の方は…?」
『どうやら、荷物は無事のようです。さっきの蛮族は、これを奪おうとしていたわけでは無さそうですね』
シュルヴェステルのホワイトボードに、そう言った文字が羅列される。
「ただの賊か」
「もしくは、この荷物を守ろうと冒険者が来るのを見越して、冒険者を殺そうとしたとか…」
「どちらにせよ、荷物は無事だったんだ」
後ろでオウルが頭を抱えていて、シュルヴェステルがそのオウルの頭を撫でているのが見えたが、そんなことは気にせずにディスティルが言った。
「私達で運ぶしかなさそうだね」
誰が馬車を運ぶのか。ディスティルは三人を順々に見る。先ずクライネ…は論外、と。次にシュルヴェステル。明らかに嫌そうな顔をしている。次にオウル…は小さいから駄目、と。
残るのはディスティルのみだった。
彼はため息をついた。
「あなた、仕事を探してるの?」
象牙亭のマスター、ルイーズが馬と戯れていたトーマスに話しかけた。
「そのようだな」
「今なら丁度いい仕事があるんだけど、少なくとも二人は必要なのよ。でもあまり人が多くても困るし…」
ルイーズはレフォーナをちらりと見た。
「一人だと危ないと思ってたところだし、私は別にいいけど。そちらの子はどうなの?」
レフォーナはそうルイーズに言った。
「私に協力してほしい」
トーマスがそう言った。その後のセリフが「飛行石になんたら~」と聞こえたが、特に気にするべきことではないように思えた。
「そう。なら話は早いわね。その仕事っていうのは…」
「どんな呪文だ、教えろその言葉を!」
レフォーナは「本当に大丈夫なのか?」と思った。
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トーマスのセリフがムスカと邪気眼で殆ど埋まってるという
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