こういう風に風呂敷広げていったら畳めなくなってしまうという
…デウス・エクス・マキナという最終手段に踏み切るかもしれないが、あれですね。
ディスティル「ライフォス様の威光を食らえ!」
ってことですよね!(違う
あ、それかあれだ。
ディスティル「さあ、一緒にライフォス様に祈りをささげましょう!」
ってことか。
リアルプリーストじゃないんでそこんところわからないよ。
いやリアルプリーストでも流石に無いだろうけど。
しばらく進んで森を抜けた先に、その扉はあった。周りの自然とは全く異なる、異質な扉が、巨大な門戸を構えてそこに佇んでいた。
扉のすぐ傍に、何かを差し込めそうなパネルが置いてあった。恐らく、レフォーナに貰った鍵はここで使うのだろう。
鍵を差し込むと、扉は重低音を響かせながら、手前に開いていく。
ゴゴゴゴゴゴ…ガシャン。
何かが丁度枠にはまるかのような感覚を与えて、その扉は奥への道を彼らに示した。
扉の先の部屋には、広い部屋の中央に描かれた魔法陣があるのみだった。
恐らく、テレポーターであろう。
シュルヴェステルの見立てでもディスティルの見立てでもそういう結論に至ったということは、それは間違いなくテレポーターである、ということだった。
「行くぞ、みんな」
ディスティルたちは魔法陣の内側に入り込む。
魔法陣に描かれた紋章から淡い光が溢れ出し、部屋全体を優しく包んでいく。やがて光は濃く、激しく、そして強くなっていき、部屋全体を「包む」と言うよりは「駆け回る」と言った方が正しく表現できるであろうものに変貌していた。
やがて、光が弱まってくる。それと同時に、ディスティルたちの体は少しずつ消えていく。
数秒後には、その部屋に残っていたのは光の残滓だけだった。
――ついに来たか、我輩を持つ可能性のあるものたちが…。
そして、その部屋の真下にあった魔法陣の上に、彼らは現れた。
「初めてだぜ、こんなの」
『私も』
「おもしろいねー」
「はい、はい」
と、それが彼らの第一声であった。
「こりゃ一生に一度も来ないかと思ってた体験の機会だな」
『これは忘れられない』
と、各人感慨深げである。
確かに、テレポーターでの移動はかなり珍しい体験だ。
まず《瞬間移動》は高位の真語魔法であるし、テレポーターは<大破局>時にその殆どが壊されている。現存するものはそのいずれもが何らかの勢力により制圧されていると考えていいから、一般の冒険者が気軽に利用できるものではない。
そのことを踏まえると、別の場所へ一瞬で行くという体験は、一生に一度あるか無いかのものだろう。
密閉された空間から、外界への通路が開かれていく。
ディスティルたちを丁重に案内するかのごとく、彼らが歩く度に長き通路に手前から光が灯っていく。
通路を抜けると、いっそう強い光に目が眩む。
「うおっまぶしっ」
「やっと広い場所に出たな…」
「広いって、ここ広すぎるよ?」
『広いってレベルじゃない』
「目が、目がああぁ…あぁ…」
光の刺激に目が慣れてくると、その部屋…いや、もうそれは部屋と呼べる大きさではなかった。大きめの屋敷が丸々入れそうなくらいには、その空間は広かった。
…誰もトーマスにかまっていないのは仕様だ。
その空間は、一面に鏡が張り巡らされていた。床も、壁も天井も、全て鏡張りだった。鏡には美しくも簡素な装飾が施されており、空間を埋め尽くす霧と相まって何とも不思議な浮遊感をディスティルたちに与えた。
霧の向こうにうっすらと、刀身に美麗な模様と紋章が刻まれた大剣が見える。重くどっしりとした、それでいて優雅な佇まいを見せるその剣は、見るもの全てを圧倒させる雰囲気を放っていた。
全長二メートルを軽く超える巨大さから現れた雰囲気もあるかもしれないが、それ以上に感じられるのは剣に込められた魔力であろう。
わざわざ口に出して言うまでもなく、それは「蜃気楼」そのものだった。
放つ気配だけで、その魔剣が強大な力を秘めているのが分かる。どのような力かは分からないが、とにかく物凄い力を秘めている、そう思わせる。
台座に収められていはいたが、その剣は上方にも見えていた。うっすらとその刀身が姿を現し、その影はいくつも生まれ、「蜃気楼」の周囲を揺らめいている。一見すると、その姿こそが本体なのではないかと思えてしまう。
あっけに取られるディスティルたちであったが、そんな彼らに「蜃気楼」は語りかけてきた。
頭の中で、尊大そうな声が響く。
「よくぞ来た、冒険者たちよ…と言いたいところだが、何人かいないみたいであるな」
「まあ、レフォーナがいないと火力も激減するってもんだ」
『ディー、クライネさんクライネさん』
「いてもいなくても大差ないだろ。大体キャラがつかみにくい奴は見てて苛立つんだよ」
『作者の本音が出てる』
あ、いや。別にクライネのキャラが気に入らないわけじゃなくてね。キャラの個性を描くならどっちかというとオウルの方が描きづら…いや何でもない。
「…考えてみれば作者、ょぅし゛ょキャラあまり描いてなかったな」
自分の趣味が現代の需要からはかけ離れてるとは自分で思うよ。でもそういうキャラ苦手なんだよ!
「いや聞いてないし。それにオウルの話書く時点で勉強しなかったのか?」
勉強ってその手段は何だよ。
「色々あるだろ。漫画にゲームにアニメに…」
やめて、それ以上言わないで。拒絶反応起こして死ぬから。
「後はそうだな、実際にふれあってみればいい。警察に捕まるからお勧めするぞ!」
できるか!
『あんたは会話するな』
「そんなことより野球しようぜ!」
「いや、我輩は野球はあまり好きではない。どちらかというならばフェンシングが好きだな」
「お前は大剣だろ」
「フェンシングと言うよりどつき合いだね」
「たまにガストを生み出して戦わせておる。これが良い暇つぶしになるのだ」
「何だ見る方か」
「え、ガストに自分を振らせるんじゃないの?」
そういうオウルの顔は至って真顔である。逆に怖い。
「だからそれはただのどつき合いだって」
「…まあそんなことはさて置いてだな。ここは一つ、余興といこうではないか」
ミラージュがそう「言う」と、周りの霧が変化しだした。
部屋中の霧全てが一箇所に寄り集まり、四つに分裂する。モヤモヤとうごめくそれはやがて、ある形を形成する。
「そなたらが自分を乗り越えられるか、少しの間楽しませてもらおう」
四つの霧はそれぞれ、ディスティル、シュルヴェステル、オウル、トーマスの姿となっていた。
そして、それらは牙を剥いた…。
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