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支離滅裂なことを書いてるただの自己満足ぶろぐ。 中の人は基本痛いです
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作曲、落書き、睡眠、TRPG、創作
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痛い人



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…あれ、2節くらい引っ張るつもりだったミラージュ戦がすぐ終わったぞー?

そして美味しいとこ取りレフォーナさん。


今回の見所:
 ・痴話喧嘩
 ・クリエイトウェポンの必要性
 ・ミラージュ様
 ・何気なく落馬シーンが多いトーマス



 一日が過ぎた。
 それぞれの戦いの決着は…未だついてはいなかった。
 ディスティル・ロッドとその鏡像の戦いは、両者共に《穢れの刻印》の力を解放し、どちらが果てるとも知れない熾烈な戦いを繰り広げ、お互いがその力を使い果たし両者気絶、その後、全く同時に気絶から回復した彼らは戦いを再開した。
 オウル・トイペットとその鏡像の戦いは、全く互角のうちに進み、休憩を交えながら戦い、現在もまだ戦闘中である。
 シュルヴェステル・ヴェンテラとその鏡像の戦いは、魔動機師同士の戦いという性質上、どうしても長期戦になってしまう。おまけに両者の銃の腕や身のこなしは全く同じ。このことが長期戦になる要因の一つとして挙げられた。
 トーマス・ベントとその鏡像の戦いは、トーマスの槍の一撃が鏡像に効いたためか、他との戦闘に比べれば短く終わった。それでも、大分時間はかかったが。
 そして、レフォーナ・アルディの行く道を塞ぐ悪鬼は、既にいない。ミラージュも既に準備を終えた。
 着々と決戦への布石は整いつつあった。
 そんな中…。
「よし、できた!」
 メイルのその声に反応し、歓声を上げるルード。この二人ときたら、既に試練は終わっていると言うのに、いつまでいるつもりなのだ。
 そうクライネは思いもしたが、そんな考えとは裏腹に、いつまでもこうしていたいと言う思いもあった。
 ミラージュのお陰で、彼女は両親と会えた。一度として会うことは無い、そう思っていた二人に、何の因果か出会うことが出来た。その機会がもう二度と現れることの無いものだとしたら、そう思うのは当然のことだろう。
 だからと言って、先に行った「仲間」を放っておくわけには行かない。
(仲間、か…)
 子供時代に共にいた、「モミアゲーズ」の人々。そして今、共にこの迷宮に挑んでいる「従者と愉快なバトルマニアーズ」の人々。
 どちらが「仲間」かと問われたら、今までのクライネならまず間違いなく前者を選んだだろう。
 ラクドース・ローレイバートという過去の幻想に囚われていた彼女ならそうだった。
 と、物思いにふけっていると、メイルとルードがにやけた顔をしながらこちらを見ているのが分かった。
 二人とも、手を後ろに回して何かを隠しているようだ。
「…いやさあ、服作ってたのはわかるから別に隠さなくてもいいよ?」
 二人はため息をついた。それが表すのは強い落胆か、それとも諦めか。どちらにせよ、二人にとってもクライネにとっても良い感情を表してはいなかったようだ。
「それじゃつまんないだろう?」
「そんな感じだからいつまで経っても彼氏が出来ないのよ?」
「いや、関係ないだろ」
 メイルは「分かってないなあ」とでも言いたそうな顔をした。クライネは自分が何か言ってはいけないことを言ってしまったのかと思ったが、どこにも思い当たる節は無い。
 だがメイルはクライネのそんな様子に呆れたのだった。
 何故この子がこんな風に育ってしまったのだろう。
 一目見たときから、そのことばかりが頭をよぎる。答えなどとっくに出ているはずなのに、そのことばかりを考えてしまう。
 そもそも、何故あの揉み上げたちは私たちを《蘇生》させなかったのだろう。冒険者を相手にならば《蘇生》はそれなりに使いやすい魔法のはず。それを何故しなかったのだろう。
 答えは既に、闇の中に、時の中に流れ去ってしまった。
 私たちが育てれば、この子はもっと…。
「メイル、メイル」
「え?」
 気付けば、自分ひとりで考えて、周りのことが見えなくなってしまっていたらしい。その点は先ほどのクライネと似ていた。
「ほら折角作った意味がないだろ?」
「…それもそうね。ルード、あっち向いてて頂戴」
 クライネは一瞬、これから何をするのかと思った。
「何で?」
「これから『チキチキ・クライネ着せ替え大作戦』を発動するのよ!」
 何だその変な名前の作戦は。そう思う間もなく、メイルに召喚されたヴァンニクたちがクライネを取り押さえる。振りほどこうとはするものの、ヴァンニク自体に害はないし、そもそも命に別状が無いなら、抵抗することこそ無駄だろう。体力の浪費だ。
 クライネのそんな様子にもお構いなく、メイルはルードに剣幕を張る。
「それなら別にいいんじゃ…」
「あなた何考えてるの。バカ?」
 メイルは険悪なオーラを放っている。近くにいたルードや、クライネですらその凄まじい雰囲気に気圧されて身動きが出来なくなった。
「だって、家族の裸見たってどうってことないだろ?」
「っるさいわね、クライネはまだ他人の男には誰にも裸を見られたことが無いのよ。あなた、何自分が一番になろうとしてるの!」
 …なんかさり気なく変なことを言われた気がしたが、今はそんなことはどうでもいいと思った。
 というか、何で分かるんですかあなた。そう心の中で突っ込んだ。
「何だよ、それ。そんなこというならリーダーはどうなんだよ。あの人が育てたってことはあの人はクライネの裸見てるってことだろ。何でリーダーは良くて俺は駄目なんだよ!」
「良いとか悪いとかそんな問題じゃないです。っていうかあなた、クライネの裸見たいんだ。このド変態。浮気者!」
「何言ってんだよ。仮にも自分の娘だぞ。別にそんなやましい感情持つわけ無いじゃんか」
「その考え自体がいけないって言ってるの。駄目よあなた。最低よ。私がいながらあなたって人は!」
「だから何でそうなるんだよ。俺は君以外の女の子を好きになったことなんか無いって!」
「そんな言葉、信じられないわ。あなたいつも女の子とすれ違ったとき振り向いてたじゃない!」
「何その被害妄想。やめてくれよ、俺は何もしてないよ!」
 …何だ、この痴話喧嘩は。
 気付けば、クライネはヴァンニクともども大きなため息を吐いていた。
 痴話喧嘩は長く続きそうだな、としみじみ思っていた。
(そういや、あんまり『女だ』ってこと意識したこと無かったなあ)
 モミアゲーズと共にいた時も、一人で冒険者として生計を立てていた時も、「従者と愉快なバトルマニアーズ」の一員となってからも、クライネはそうだった。
 今まで、それのどこが良くて、どこが悪いかなんて全く考えてこなかった。考えようと言う気にすらならなかった。
 だけどもう…。
「あの、お二人さん…?」
 恐る恐るクライネがそう言うと、二人は大げさな反応を示した。短く「あっ」とだけ言い、それから二人そろって顔を赤らめる。
(…しかし似てるなー、この二人)
「なに、クライネ?」
 ヴァンニクたちでクライネをがんじがらめにしておきながら放置はひどすぎる、と自分で思いながらもその言葉。メイルはその白々しい態度に嫌悪感を抱いた。
「どうしたの?」
 赤らめた顔をクライネに見えないようにして、メイルはクライネに言った。
「…私、自分で着替えられるからさ。こうやって押さえつけるのやめて」
「あ、ごめんね」
 メイルが手で何らかの合図をすると、ヴァンニクたちはクライネを離し、深々とお辞儀をしてメイルの傍らに戻っていった。
 クライネはメイルから服を受け取ると、木陰に姿を隠す。
 その過程でルードの姿を少しだけ確認したが、メイルの態度に機嫌を悪くしたのか、そっぽを向いたまま黙りこくっていた。
 結局メイルの言いなりになっているところを見ると、何だか少し可哀想に思えてくる。もしかしたら、メイルはそれを狙っていたのではないか、と思わせるくらいだ。…まあ、メイル自身も気を悪くしているみたいだし、両者とも自覚は無いのだろう。
「ちょっと待ってて」
 クライネは血だらけの服とハードレザーを脱ぎ捨て、メイルから貰った、綺麗な布地の服に袖を通し…ていく前に、まず身体を綺麗にしたほうが良さそうだと感じた。服が綺麗でも、身体が汚ければ意味がない。
 幸いにも近くに泉があったので、そこで身体の汚れを落とすことにした。
「温泉…。まあ、予想はついてたけどね。なんか一生懸命に背中流してくれるのがいるし…」
 そうして身体の汚れを落としたあと、改めて服に袖を通す。それから、水面に映った自分の姿を見て、少し面食らった。
(うわあ、服が違うだけでこんなに変わるもんなんだなあ…)
 相変わらず自分の仕草は汚いし、髪も所々が跳ねている。それでも、その出で立ちから受ける印象は、何から何まで今までとは違っていた。
 メイルとルードの前に出ると、彼女らは目の前のクライネに対して、小さな拍手を贈った。
 クライネは顔を赤らめた。
 やはり、若干の照れがあるらしい。赤らめた顔を隠すようにして、彼女は頭を掻いていた。
「クライネ、今まで何もしてあげられなかった分はこれだけじゃ埋められないけど…」
「それでも俺たちが君にしてやれることは、この限られた時間じゃこれくらいしか出来ないんだ。許しておくれ」
 口々に言う声は、どこか空しい響きを含んでいた。
 だけど、それを覆い隠しそうなくらいに大きな広がりをもって発せられていた。中身は空っぽだけど、それを包む周りのものは十分に暖かい、そんな響き。
 許しを請うような二人の態度は、クライネにとっては本当にささやかなものでしかなかった。
 元々、彼女は彼らに対して怒りなど持ってはいなかったから。
「いや、いいよ。もう十分受け取ったから」
 微笑んで、彼女はそう言った。
 ルードが何かを言おうとして、メイルがそれを遮った。
「そろそろお別れみたい」
 試練が終わった後、すぐに帰らなければならない彼女たちが今まで残っていられたのは、ミラージュなりの気遣いがあったからだろう。誰に対するものなのかは、予想の範囲を超えないのだが。
「クライネ、いくらエルフの寿命が長いといっても永遠じゃない。私達は天界で待っているから後からゆっくりと来なさい」
「…出来るだけ長く待ってもらうからね」
 少し口を尖らせてクライネは言った。 暗に「長生きしなさい」、「長生きするよ」と言っているのだ。
「その意気よ」
 そう言うと、メイルは軽く微笑んだ。
「君の仲間にも伝えてくれ。『お元気で』と」
「いい人たちに出会ったみたいね」
「…まあ、変な奴ばっかだけど、いい奴らだよ」
「この出会いを、大事にしなさい。私たちの愛しい、小さな妖精の子…」
「じゃあ、ね。短い間だったけど、会えてよかったよ」
 今まで生きてきた時間に比べれば、それはほんの一瞬だった。確かに、そうだったのだ。たった一日など、二十と一年という歳月に比べれば、本当に一瞬だった。
 この一瞬をずっと抱きしめていたい。この一瞬がずっと続けばいい。クライネはそう思わずにはいられなかった。同時に、それが悪いことだとも思えた。
 何のためにラックや彼女の両親が現れたのか。
 それを考えれば、自ずと分かる。
「ええ。私たちもあなたに会えてよかったわ、クライネ」
「これからは君が歩き出さなきゃいけない。でも、私たちは心配していないよ」
 ルードの一人称が変化したことを、クライネは聞き逃さなかった。だが彼がどういう時にそうするのか、それは彼女には想像出来なかった。
「リーダーが君を立たせて、私たちがそれを後押しする。その過程で君は自分と向き合ってきたはずだ。君は自分を超える強さを身に着けたんだ」
「だから、もう誰かに頼るのではなく、頼られる人になりなさい。あなたの力を欲するものは必ずどこかにいるわ」
 徐々に、彼らの身体が光に包まれていく。彼らが彼らの世界に帰る兆候だ。
「また会いましょう」
 若干の口調の差異はあるものの、二人はそう言って、クライネの目の前から消えていった。
 安らかな温もりを感じる光の包む空間は、その色を緑から空色へと変えた。どこまでも澄み渡るような、どこまでも続いていそうな、青い色。自らが自由に大空を飛んでいるような感覚の中、クライネはさっきまで両親のいた空間を見つめていた。
 そして、彼女は一歩を踏み出した。ただ穏やかに、緩やかに。

 父さん、母さん…。あなたたちはやっぱり、私の誇りだ。
 あなたたちが見守ってくれるなら、この先どんなものが待っていても、どんな辛いことがあっても、乗り越えられる気がする。
 だから、まだ貴方たちとは会うことはないでしょう…。

「ほお、第四層の試練を超えたか」
 巨大で、何も無い鏡張りの空間。そこに漂うのは、巨大な怪鳥。右に雷を、左に風を纏った翼を持ち、鏡のように輝く羽毛を揺らし、ただそこにいる存在。
「我輩の最後の試練、やつらなら乗り越えるやもしれぬな」
 今のところ自分を乗り越えられたのはクライネとトーマスのみ。
 それでも、“それ”自身が相見える時が来た。
 いざ行かん。最後の試練を与えんがため。
 さあ。
「我輩は幾千もの時を重ね、この時を待っていた。冒険者たちよ、私の声を聞くが良い。我が名はミラージュ。“不死を殺す”聖者の剣なり」

 突然、目の前の分身が消えた。
 再び霧となって消えていくそれらの代わりに、魔剣ミラージュの真上に鷲が現れた。右の翼に雷を纏い、左の翼に風を纏いし鏡の巨体を持つ鷲。
 右の翼を取り巻く雷が奔る度に、パリパリと音を立てて光が放たれる。静かに、しかし眩しく明滅する右の翼とは対照的に、左の翼はたゆたい、落ち着きの無い様を見せていた。ゆらゆらと揺らめいて、決してそれが留まることは無い。
 それが翼は、まるで自分の意思を持っているかのようであった。
 そして二つの翼を束ねし頭は、まさしくそれらを束ねる王者。
 まばゆい輝きを持つ羽毛は、全ての光を反射する鏡。
 ディスティル・ロッドはその姿が、何者であるかを理解した。
「ついにお出ましってか」
 自分たちの分身を生み出し、戦わせた張本人。クライネやオウル、ディスティルに試練を課した張本人。
 ミラージュだ。
 …言わば、ミラージュの力の化身。
「時は満ちた。我が力を超え、我輩を持つに足る力を示すがいい」
 鷲の口から言葉が発せられた。言葉自体は全く理解に至らなかったが、その意味は直接頭の中に流れ込んできた。
 ミラージュは翼を羽ばたかせ、飛び上がった。
「気をつけろ、来るぞ!」
 ディスティルたちはそれぞれの武器を構える。全身全霊をかけた、最後の戦いが始まろうとしていた。
 機先を制したのはミラージュ。風と雷の力を宿した鷲が念じると、巨大な火球がディスティルに襲い掛かった。それと同時に両の翼を振るえば、雷が槍となって雨のように降り注ぎシュルヴェステルを襲い、風の刃が空気を切り裂きながらオウル目掛けて進んでいく。
 ディスティルは辛うじてその攻撃を避けたが、巻き起こる爆風に吹き飛ばされた。
「ぐああっ!」
 すぐに体勢を立て直すも、少しはダメージを受けた。損傷は軽微だが、これが重なればとんでもないことになる。
 シュルヴェステルは雷の雨を耐え切ったが、相当なダメージが来ている。オウルはどうにか刃の全てを避けきったようだ。ディスティルはそれを確認した後、シュルヴェステルに言った。
「シュル、クリエイトウェポン、パワーリスト頼む!」
 了解、と言った仕草をして、シュルヴェステルは起動語を唱える。すると、シュルヴェステルのマギスフィアが二つ変形を始め、手甲を形成した後、ディスティルに向かって一直線に飛んでいく。
 ディスティルはそれを受け取って、自分の手甲を外し始める。オウルはミラージュに向かい、攻撃を放つ。だが、ミラージュが飛行しているためかその攻撃は当たらなかった。
 全長二十メートルにも達する巨大な両の翼がオウルを襲い、オウルはそれをギリギリのところで避けていく。かなりの巨体を持つにも関わらず、ミラージュの攻撃は狙いを外さず、そして鋭く、更に速い。「従者と愉快なバトルマニアーズ」一の回避力を誇るオウルでさえ、避けるのが精一杯だった。
 攻撃の手を休めず、尚且つミラージュはオウルに語りかけた。
「そなた、何故《蘇生》を受け入れた」
 言語こそわからないものの、その意味は頭に直接伝わってきた。
 オウルはその問いかけに、思わず足を止めた。そのため、すぐそこまで来ていた攻撃に反応することが出来なかった。
 翼に打たれ、叩き伏せられ、しかしそれでも攻撃は止むことがない。
「三年前、そなたの慕っていた芸術家は死んだ。そなたはその悲しみを、『芸術家は生き返る』という思い込み、付け上がりに突き動かされることへの免罪符にした」
 オウルの動きが完全に止まった。自分で止めたのだ。
「その結果、アリオブルグという男に出会い、それがそなたの因縁を決定付けるものとなった」
 雷と風の翼がオウルを打ち、風が生む刃と雷の奔流に苦しみが生まれ、オウルの体力を徐々に奪っていく。
 つまらぬな。
 ミラージュはそう感じたが、しかし攻撃を止めることはない。
「そして、お前はただ怒りに任せてアリオブルグに牙を剥き、逆に牙を折られて死んだ」
 オウルの記憶に、そのような光景は無かったが、恐らくはそう言った状況だったのだ、とは当のオウル自身にも予想は付いていた。もう絶対そのような状況にはなるまいと思ってもいた。
 だが、もし今一度そういった状況になったとして、また同じことをしないとは必ずしも言えない。
 過去から学ぶには、オウルはまだ幼すぎた。
「今一度言う。何故そなたは《蘇生》を受け入れた」
 もはや、体は限界を迎えている。だが、倒れてはいけないという、ある種の強迫観念にも似た思いがオウルにはあった。
「《蘇生》は穢れを生む。アリオブルグとそなたの因縁も、《蘇生》が原因となった。だのに何故そなたは《蘇生》を受け入れた」
「…仲間がいるから」
 オウルは小さな声でそう呟いた。かすれた声で、弱弱しく。
 ミラージュは攻撃の手を止めた。
「きっと、魂が穢れても、あたし、生きたいって…願ったんだとおもう」
 うつむきながら発せられたその声は、ミラージュには何の変化ももたらさない。
 無意味な問いをした、そうした後悔があった。
 我ながら愚かな問いだった…と。
「今は、あたしがそう思えるワケはわからないけど…あたしは、一人じゃない」
 一瞬の沈黙。
「みんなと…一緒にいたい」
 全く予想外な場所から、巨大な拳が飛来した。いや、拳のような空気の塊が、ミラージュを襲ったのだ。
 神の拳はミラージュを弾き飛ばした。そして、バランスを崩して転倒したその先には。
「マギスフィア起動、ショットガン・バレット装填、発射」
 シュルヴェステルが起動語を唱え、引き鉄を引くと、魔力の込められた銃弾が銃口から発せられた。
 銃口から発せられた途端、弾は分解して飛散し、ミラージュの胴体から頭部までを満遍なく襲った。この巨体では全てを避けきることは出来ず、ミラージュは散弾の多くを食らい、ミラージュに多大なダメージを与えた。
 転がってうつ伏せになり、翼を使って起き上がると、ミラージュは再び飛翔した。
「中々やるではないか…、今のは少し痛かったぞ」
 ミラージュは自らの信仰する神に祈りを捧げた。すると、ミラージュの受けた傷はものすごい速さで癒えていく。そして、両の翼を振った。すると、風の刃と雷の雨がその場を包み込んだ。刃に切り刻まれ、雷に打たれた彼らだが、どうにか耐え切った。
 仲間…。
 調和の神々を信仰するミラージュにとって、その言葉は理想以外の何物でもなかった。実現すべきもの、存在すべきもの。
 だが、時として仲間は大きな綻びを作り出す。剣の力を分け与えようとした我らが神が荒ぶる神々によって裏切られ、大きな戦い…それも、我らが神が創り上げた文明世界を崩壊させる程の戦いが起こったのだ。
 それ故、仲間と呼べる存在を作るときは相手を選べ。我らが神はそれを教訓として学び取ったのだ。
 分け隔て無き調和で世界が平和に包まれるわけが無い。かといって自由と言う名の狂気に囚われても世界は平和にはならない。
 敵は確かに存在する。それが穢れ。
「この…穢れ持ちの集団めが!」
 吹雪が彼らを襲い、彼らの体温を降り注ぐ氷と雪が奪っていく。
 ミラージュは巨体に似合わぬ素早い動きで攻撃を避け、更に反撃として両の翼をトーマスとディスティルに叩き込む。
 穢れは悪だ。根絶しなければならない、悪。
 故に我らが神は蛮族を否定し、アンデッドを否定し、魂の清らかさを説く。聖者としての道を説く。
 だが、今ここにいる命知らずは、その穢れを受け入れた。それはミラージュにとって許しがたいことであった。
 それでなくとも、既に十分な穢れを持つものが二人いると言うのに。
 トーマスの槍は一本は弾かれ、もう一本は身をかわして、反撃に打った攻撃によって刃を折られ、使い物にならなくなる。
 ディスティルは飛び上がって、ミラージュの翼に殴りかかるが、左の翼の周りに渦巻く風によって攻撃が逸らされる。シュルヴェステルの攻撃も、オウルの攻撃も、全てを避けた。
「そなたらの力はこんなものか、それがそなたらの強さか。違うだろう。まさか、我輩を超えられぬというわけでもあるまい?」
 巨大な翼による攻撃が二発、トーマスに襲い掛かる!
 何とか一発目は避けたが、二発目は限界だった。トーマスの体は宙に浮き、馬と引き離されたトーマスは地面に衝突した。
 ミラージュの巨体に似合わぬ動き、ディスティルたちの持ち得る速さ、それらが相まって高速の戦闘が繰り広げられていた。見る側としては、ついていくのですらやっとなほどだ。
 多少は善戦していたが、今のディスティルたちには決定的な火力が足りなかった。次々と蓄積していく仲間へのダメージを回復するために、ディスティルは魔力撃を放つことが出来ずにいた。また、トーマスの槍が一本破壊されたのも、影響が大きかった。
 シュルヴェステルですら回復に回らなければ、とても戦闘を継続できるものではなかった。
 そして…。
「そなたらは期待はずれであった。我輩を掴むことのできる者はいなかった、ということか…」
 ミラージュは高く飛翔した。巨体が影を生み、影はその空間を埋め尽くすくらいに大きくなり、そしてまた小さくなる。
「せめてもの情けだ。華々しく散るが良い」
 雷と風の両翼を振るわせようとする。
 その時。
「真、第十一階位の攻。電撃、電撃、滅殺、迅雷――豪雷!」
 ミラージュの体を、天より降り注ぐ稲妻が貫く!
 たまらずミラージュは攻撃を止め、巨体を地面へ激突させる。ズドォン、と大きな音と地響きを生じて、ミラージュは地に伏せた。
 ミラージュは体を起こし、その空間の入り口を見た。
 そこにいたのは、金髪、緑のローブに身を包んだエルフの魔導師…だった女性。不死の存在となってしまった、哀しき吸血鬼。
「『華々しく』かどうかはわからないけど、散るのはあなたの方だったわね…、“蜃気楼の魔剣”ミラージュ」
 レフォーナ・アルディだった。
 瘴気を身に纏って、彼女は冷たい目線を巨鳥に向けていた。
「貴様…!」
 ミラージュは風の刃と雷の雨をレフォーナに撃ち込もうとするが、レフォーナは既に次の詠唱にかかっていて…。
 翼を振り切る頃には、レフォーナは呪文を完成させていた。
「消えなさい。そして…私の願いのため、その身を私に捧げなさい」
 印を結んで、彼女は言い放った。
 空間をも切り裂くマナの剣が、ミラージュの体をズタズタに切り裂いた。

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