7.1 測定結果の考察
図6.1、図6.2より、まず一目でわかるのは、電圧Vが上昇するとg0、cosθ0は概ね減少しており、反対にb0は上昇することである。g0が減少しているということは、鉄損抵抗が上昇しているということである。このグラフは、電圧Vが上昇するにつれて、鉄損分コンダクタンスと力率が減少し、電圧Vが上昇するに連れて主磁束はその変化率共々増加することを表している。また、g0が減少するのは、鉄心がヒステリシス特性を持つからであると考えられる。立ち上がりでは透磁率が低く、その影響によりインダクタンスも低いが、電圧Vが上昇するにつれて透磁率が高くなりg0は減少し、定格以上では鉄心の磁化が飽和を始めるために透磁率が減少し、g0が上昇したのだと考えられる。
図6.3より、まずrは目立った変化は見られない。x、cosθsは最初は変化が見られたが、60%以降は概ね一定の値をとっている。かなり多めに見れば、30%辺りで一定の値を取っていると言える。このグラフが示すのは、銅線抵抗と漏れリアクタンス、そしてその力率cosθsは一定の値を示すことだと考えられる。立ち上がり時のx、cosθsの変化はヒステリシスによって透磁率が変化したために引き起こされたものだと考えられる。
7.2 b0の上昇に関する考察
-jb0=1/jω0Lである。ωは印加電圧の周波数なので、Vの大きさが変化してもωは変化しない。ここで、自己インダクタンスLは、巻数Nのコイルに磁束φが鎖交しているとき、コイルに流れる電流をIとすると、
L=N*φ/I … (1)
と表される。また、磁気抵抗をRとすると、磁気回路におけるオームの法則より電流Iは
I=R*φ/N
となり、これを(1)式に代入すると、
L=N^2*/R
となる。磁気抵抗Rは磁路長l、磁路の断面積Sで透磁率μのとき、l/μ*Sと表されるので、自己インダクタンスLは
L=N^2*μ*S/l …(2)
となる。
実際の磁性材料はヒステリシス特性を持つ。磁束密度B[T]は、透磁率μ、磁界Hのとき
B=μ*H
と表される。上式よりμ=B/Hとなる。磁束密度Bは単位断面積辺りを垂直に貫く磁束であるため、φ/Sと表せるので、μ=φ/H*S。このμを(2)式に代入すると
L=N^2*φ/H*l
となる。HはIによって変化し、I=V/R=g*VよりIもまたVによって変化するので、LはVによって変化する。
7.3 変圧器の値の計算
百分率抵抗降下および百分率リアクタンス降下は、定格電流における巻線抵抗およびリアクタンスでの定格電圧に対する割合を百分率で表したものである。これらの値を知るために、Iin、Vin、r、およびxは定格電流時のものを使用し、その値を元に百分率抵抗降下および百分率リアクタンス降下を求めると、
p=r*Iin/Vin*100=2.96 [%]
q=x*Iin/Vin*100=1.58 [%]
この二つより、百分率インピーダンス降下を求めると、
z=√(p^2+q^2)=3.36 [%]
となった。
7.4 電圧変動率の計算
一次側(U1-V)、二次側(u1-v)の変圧器の電圧変動率を、7.3より求めた百分率抵抗降下、百分率リアクタンス降下を用いて表す。電圧変動率は巻線抵抗をr、リアクタンスをx、負荷力率をcosθとすると、特に精度を必要としない場合、
ε≒r*cosθ+q*sinθ [%]
で表される。ここで、cosθ=0.8とした場合、sinθ=0.6となる。r、xは7.3と同様に定格時の値を用い、最終的な結果は
ε≒3.32 [%]
となる。因みに、測定したcosθの値を基に計算した場合、
ε≒3.36 [%]
となった。
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