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支離滅裂なことを書いてるただの自己満足ぶろぐ。 中の人は基本痛いです
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何を言ったら良いんだろう。


とりあえず、こんなパーティでよく戦えて来れたなと。



 蜃気楼の迷宮から帰ってきた彼らは、強力な魔剣を手に入れた冒険者としての名声を手にして、クイーンズタウン中で有名になった。その名は、今やアム連邦全土に行き届こうとしていた。
 従者と愉快なバトルマニアーズ。
 それは彼らのパーティの名前だった(と言っても、彼らがその名を使ったことは無い)が、彼らが蜃気楼を手にしたことで、その名前は変容を遂げた。
 今や彼らのパーティを指す名前は、「蜃気楼の勇者たち」。人々は彼らのことを、畏敬の念を込めてそう呼んだ。
 しかし、そんな彼らもまた人族。となれば、別れのときは来る。
 それはまるで、魔動機文明時代に一世を風靡した超人気ロックバンドが解散するかのようであった。
 …いや、そうではない。超人気ロックバンドが大勢のファンに惜しまれながら散り散りになるといった、湿っぽく涙ぐましいものではない。どちらかと言えば、魔動機文明時代に流行ったとされる、「遠く離れた場所の映像や音声を届ける薄いパネル」に配信されていた「どらま」と言うものの撮影…それを終えたことで製作チームが解散するときのような、達成感に満ちたものだった。
 まず初めに別れを告げたのは、彼だった。

「そろそろ、俺たちは別れたほうが良いんじゃないか?」
 冒険者の店「象牙亭」。その賑やかさの中なら、その言葉が他の人々に聞こえることはない。
 今はこの話は内密にしておきたかった。だからあえてこの場所でディスティルは切り出したのだろう。
 その言葉に真っ先に反応したのは、クライネ。
「ちょっと、それどういうこと?」
「俺はもうこんな変なパーティにいたくは無いんだよ。硬いやついねーし、変なのばっかだし、大体俺とオウルは意外と役割被ってるんだよ」
 ディスティルの言うことは尤もだった。
 このパーティ唯一の戦士であるクライネはエルフである上に、妖精使いでもある。妖精は金属を嫌うために金属鎧は着れないし、筋力も劣る。更に斥候でもあるクライネが金属鎧を着るわけにはいかなかったのだ。ゆえに、クライネの防御能力はそこまで高くない。
 次にトーマス。身軽さを重視する軽戦士である彼は重い鎧を着れない。更に彼の本分は二本の槍による攻撃である。馬上から繰り出される攻撃はかなり威力が高い。だが、盾を持てない点において彼の防御能力はクライネに劣る。
 シュルヴェステル。彼もまた斥候なので、金属鎧を着るわけにはいかない。二丁拳銃の使い手である彼もまた、クライネの防御能力に僅かではあるが劣っていた。
 そして、オウル。元々、拳闘士は攻撃をかわしながら多い手数で殴りこむことを得意とする職業であり、それが本分である。必然的に彼女の装備は身軽なものとなるのだ。それはディスティルにとっても同じであった。
 …要するに、彼らは「ぺらい」のだ。
「でもあたし、魔力撃つかえないよ?」
「…まあ、回復のほうが忙しいんだけどな確かに」
 普段の彼らの仕事で、戦闘になった場合のことなのだが、クライネは戦闘中にこけるわオウルはカウンター時にファンブルするわ…とひどい有様だった。かく言うディスティルも《傷心癒し》を暴発させるという失敗をしてしまったのだが。
 蜃気楼の迷宮では、張り詰めた空気が常に彼らに纏わりついていたためにそういった失敗が無かったが、どうも帰ってきてからその反動が来てしまったらしい。
「とにかく、俺たちはここで別れる。新しいパーティを組んで、好きにやらせてもらうさ」
 ディスティルの態度は飄々としていたが、彼が自分の感情を表に出していないだけだということは、シュルヴェステルとトーマスには理解できた。
 だが、他の二人にはそれが理解できなかった。
「でも…」
「どうしたよ、お前。今までのお前なら『清々した』とか言うくせに」
『クライネさん、もしかして…』
 そんなわけはない。そう思いつつもシュルヴェステルは「言ってみた」。
「違うよ。ただ…『別れ』っていうのが、まだちょっと…」
 別れ。
 クライネにとって、それは未だ受け入れがたいことだった。
 だが、別れの後には出会いがある。無論、出会いの後にも別れはある。
 別れがあるから、出会いを大切にする。そのことを悲しいと、クライネは未だ思っていた。
「あたしもまだディー君とは一緒にいたいな」
 オウルも、どうやらそのようだった。
『そうらしい』
「…ったく、誰が今すぐ別れようなんて言ってるんだよ」
 そう呟くディスティルの顔は、「やれやれ」とでも口から吐き出しそうだった。
「覚えとけよ。出会いってのは、別れのためにあるもんなんだ。そして別れは、自分を変えるためにある。出会いは別れだ。でも、それは何も悪いことじゃない」
「ディー…?」
「俺たちは確かに別れることになる。今でなくとも、いつか起こりえるんだ。受け入れなきゃいけないことなんだ。でも、これが今生の別れになるわけじゃない。会おうとすれば、いつでも会えるさ。だから…湿っぽい顔するなよ?」
 そこまでは何とか堪えていたが、それ以上は限界だった。
 ディスティルは席を立ち、厠へと赴いた。
 それから数日の時が流れ…。
 彼らは、テラスティア大陸域の船に乗っていた。
 ディスティルは甲板の端で、手すりに身体を預けながら潮風に当たっていた。
 心地好い風が、ディスティルの服と髪を弄び、すり抜けていく。ぱたぱたと音を立てて揺らめく服と髪を、不思議と鬱陶しくは感じなかった。
 そこに、山吹色の衣装を身にまとったエルフ…クライネと、ドワーフの少女…オウルが現れた。
 彼女らはディスティルの傍に寄り、同じく潮風に当たる。
 そして、口を開く。
「何もお前まで大陸に行くとか言わなきゃよかったのに」
「どうにも有名すぎるってのは嫌でね。誰も俺のことを知らないような土地に行って、そこでのんびりしたいもんだね」
 クライネの方を見向きもせず、ただ風に体を預けながらそう言った。
「ディーもそうなんだ」
 前々からアム連邦の空気が気に入らなかったクライネだったから、これを期に大陸へ戻るのも悪くない、そう思っただけだったのだが…今の彼女には、大陸へ戻りたい理由がもう一つあった。
「なんだ、お前もか」
「なんだか変なやつにも追いかけられるようになったし、振り切るついでに色んなところへ行ってみようかなって思ったんだ」
「何だ、ストーカーか?」
「まあそんなもんかな。日の光が苦手だから昼には出てこないんだけど、夜はなかなかしつこくて」
「…なんだそりゃ。いやらしく聞こえるぞ」
「何の話ー?」
「お子様が聞いていい話じゃないぞ」
 ディスティルはオウルの両耳を塞いだ。
「何、お前ってそんなこと考えてたんだ?」
 ジトーっとした目でクライネはディスティルを見下ろす。彼が何を考えているのか、それはどうでもいい気がしたが、良いことではないだろう。
「いや誰が聞いてもそんな反応をすると思うぞ」
「…トロールだよ、トロール。いっつも夜中になると『勝負だ!』とか言ってきて、逃げるのが大変なんだから」
 蜃気楼の迷宮の第三層にてクライネが戦ったダークトロール、ホイット。彼は蜃気楼の迷宮から帰ってきたクライネを執拗に狙っていたのだ。わざわざ寝ているところを叩き起こして、真剣勝負を挑んでくる。寝込みを襲わないだけマシなのだが、クライネにとっては迷惑極まりない。
 ディスティルはオウルの両耳を開放した。
「それは…ご愁傷様としか」
「何だよその態度は」
 クライネはそっぽを向いた。
「で、オウルはどうなんだ?」
 ディスティルはそんなクライネを無視して、オウルに言った。
 オウルは「大体みんなと同じかな」と言って、
「どこに行ってもみんなあたしのこと知ってて、居辛いんだよねなんか」
 そう付け加えた。
「結局、みんな考えることは一緒ってわけか」
「そうみたいだね」
「仲良いね、あたしたち」
「ただの腐れ縁だろ?」
「そうだね、ただの腐れ縁だよ」
「腐れ縁って?」
「いずれわかるよ、オウル」
 クライネもディスティルも、オウルも、自分が有名であることに嫌気が差していた。それが、彼らをウロウ島に居辛くさせていたのもわかっていた。
 大陸には、未だ彼らの名は行き届いていない。だが、このまま彼らが冒険を続ければ直に知れ渡ることになる。
 だったら、彼らのことを誰も知らない場所で、のんびり生きたい。
 そう思うのも頷けた。
 オウルは「腐れ縁ってなあに?」とシュルヴェステルやらトーマスやら、船の乗組員に聞いたりしていた。そんな様子は、本人にしては真剣なのかもしれないが、傍から見ればとても和やかに思えた。
「…最後だから言っておくよ、ディー」
 クライネが突如言った。
 ディスティルもそんな予感はしていた。寧ろ、そちらが本題だと知っていて、何も言わなかった。
「ありがとう」
 声に、若干の揺らぎと緊張があった。彼女の顔を見れば、少しだけ頬が高潮してるのが分かった。
 そんな様子から、一年と数ヶ月と言う歳月を共に過ごした彼らへの、感謝の念と…もうひとつ、クライネ本人にしかわからないような、複雑な感情が揺れ動いているのが、表情と声から読み取れる。
 ディスティルはふっと笑って、口を開く。そこから紡がれる言葉は、至って平静を保っていた。
「お前らしくないな、ほんとに。ミラージュの迷宮で何があった?」
「…べつに。ただ、これからは『女らしく』生きたいって思っただけだよ」
「あ、そう」
 一層強く、潮風が吹きぬけていく。
 見れば、ウロウ島は既に小さな影になっていた。

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