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支離滅裂なことを書いてるただの自己満足ぶろぐ。 中の人は基本痛いです
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作曲、落書き、睡眠、TRPG、創作
自己紹介:
痛い人



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※話しかけても基本反応ありません。
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クライネ然り、オウル然り、それまでの積み上げがないからどうにも薄っぺらく感じるのは俺だけだろうか。



 オウルの住んでいたドワーフの集落に、疫病が流行った時期があった。
 後で分かったことであるが、その病気は、大人に対して効果があるウィルス性のもので、人間よりは病気に強いドワーフにさえ猛威を振るうものだった。
 そのこともあり、オウルが慕っていた人間の芸術家は、集落のドワーフより症状がひどかった。
 オウルは、その芸術家が流行り病にかかっていることを知ると、毎日のように彼を看ていた。その集落にあったザイア神殿の司祭にも頼み込んだ。しかし…。
「だめだ。これでは助からん」
「どうして。魔法で治せないの?」
 当時、今よりもっと幼かったオウルは、司祭の言うことが信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「《病癒し》が効果をもたらさないんだ。おそらくは、なにか強力な魔法による病気だろう」
「そんな…」
 司祭の話によれば、何者かが魔法でこの病気を引き起こしていると言う。
 それが何の目的で行っているものなのか、それは不明だが、とにかく、この件に関する調査はザイア神殿が担当することになった。
 オウルにできることは、日に日に弱っていく芸術家をただ看ていることしかなかった。
「…死んじゃうの?」
 オウルは、司祭に恐る恐る聞いてみた。この時のオウルは、既に「死」がどういうものか、理解するに至っていた。
 そして、それに直面することを恐れていた。…だが、その返事は最悪の予想を全く裏切らなかった。
 司祭は、オウルの問いかけに対して「ノー」を表すように首を振るだけだった。
 その晩、オウルは泣いた。滝から水が零れ落ちていくかのごとく。
 童心ながらにも慕っていた芸術家が、どこか遠くへ行ってしまう。そのことを受け入れろと、はっきり示されたのだから、当然だろう。
 しかし、その事実に抗おうとする考えも、確かに頭の中にはあった。
 そして…一週間後、芸術家は死んだ。
 悲しみはあった。だが、それと同等の希望もあった。
 冒険者。今まで思いもしなかったその単語が、今まさに頭に浮かんだ。
 冒険者の店と契約している操霊術師がいるかもしれない。それはつまり、芸術家を《蘇生》させよう、ということだった。
 そんな淡い希望が、彼女の中にあって、それがこの時の彼女の原動力となっていたのだ。
 しかし、冒険者の店は、流行り病の影響か営業はしていなかった。
 そこに通りかかったのが、その男だった。
「どうしたのだ、小娘?」
 その男は、そうオウルに話しかけてきた。
 その男は、身なりはしっかりとしているものの、纏う空気はどこか怪しげであった。…幼いオウルには、そのことはわからなかったが。
 それに、不気味なほど白い肌に、頭から少しだけ覗かせている角。ナイトメアの証だった。
「集落で病気が流行ってて、あの人もそれで…」
「あの人…?」
「人間の男の人。絵を描いててね、とても上手だったの。あたし、その人のこと大好きだったの…」
「なるほど、その男を《蘇生》させようとしたはいいものの、冒険者の店が閉まっていて途方にくれていた、ということか」
 その男はそう言うと、自分が芸術家の蘇生をしてやる、と言ってきた。しかもその代金は格安にする、という。
 オウルにしてみれば、その申し出を受けない手は無かった。しかし、世間一般からしてみれば、それはどうであろう。
 《蘇生》を請け負う操霊術師の多くは、死者の蘇生をかなり高額で請け負う。それは、死者の蘇生に伴う様々なリスクを鑑みてのことだ。
 通常、死者の魂は神々の住まう世界に導かれ、来るべき神々の戦いに備えると言われている。この時、神々が納得する強さを持ちえていない魂は現世へと送り返され、新たな命を得るという。
 《蘇生》はこの魂のサイクルを狂わせ、強制的に死者の魂を肉体へ戻す行為なのだ。
 《蘇生》によって強制的に呼び戻された魂には、その代償として”穢れ”が溜まる。そして”穢れ”の印は、角や痣などの身体的な特徴として現れる。
 ”穢れ”を溜め込んだ魂が《蘇生》を受けたり、《蘇生》に失敗したりすれば、救われざる死者…アンデッドとなり、現世をさまようこととなる。
 また蛮族はこの”穢れ”をある程度取り込んだ末に力を得ている。
 これらのことから、一般には穢れを忌避する傾向にあり、それが過激になるとナイトメア…”穢れ”を持って生まれてしまったものに対する差別へと繋がる。
 ”穢れ”を与える《蘇生》を使うことのできる操霊魔法も、例外ではない。
 だからこそ、操霊術師の多くは一般人が気軽に《蘇生》できないように、かなりの高額を要求するのだ。
 だが、幼いオウルは、そんなことは微塵も考えてはいなかった。ただ、芸術家を生き返らせたい、それだけの願いだったのだ。
「お願い、あの人を生き返らせて!」
 オウルは懇願した。これで、あの人に会える。そう確信した。
 …しかし、そんな希望も、打ち砕かれたのだ。

「ありがとうございます」
 執事服を着た、腰に二丁拳銃を差した男性型のルーンフォークが言った。
 その姿はまさしく、シュルヴェステル・ヴェンテラそのものであった。
 現在の彼とは違い、喋っていた。…彼がいつごろからホワイトボードを使い始めたのか、またその理由が何なのかは知る由もない。
「おお。しかしあんた、物好きだねえ。なんでこんなドワーフの集落なんか来ようって思ったんだ?」
 馬車を動かしていたドワーフの男が言った。
「ついこの間、私の主人がお亡くなりになりまして」
 シュルヴェステル・ヴェンテラは、フェイダンの大都市アイヤールのとある領で貴族に仕えていた。その貴族の主人が優秀な魔動機師だったため、その従者であったシュルヴェステルもまた魔動機師になったのだとか。
 それが先日のこと、主人が逝ってしまい、シュルヴェステルはショックのあまり、アイヤールを飛び出したのだとか。
 そんなこんなで、今シュルヴェステルは新たな主人を探していたのだ。
「…そうか。気の毒になあ」
 ドワーフが馬車を発進させながら言った。
「いえ、いいのですよ。過ぎたことは過ぎたことです」
「へー、強いんだなお前さん」
 ドワーフは感心した様子である。シュルヴェステルの様子はどこか落ち着いて見えるものの、少しばかりの揺らぎが見て取れる。
 それはまだ見ぬご主人様への期待と不安、そうしたものが混ぜこぜになっているのか、それとも前の主人に思いを馳せていたのか。
 いずれにせよ、シュルヴェステルは動かずにはいられなかった。
 そんな揺らぎをひた隠しにして、シュルヴェステルは口から言の葉を放り投げる。
「寧ろ、主人がヤワすぎたんですよ。それに相当な年でしたし。どうせなら今度は若くて、長生きしそうな主人に仕えますよ」
 できれば、自らの稼動限界が来るまで生きていられるような、若い主人を見つけたい。それがこの時のシュルヴェステルの願いであった。
「そりゃあ、ドワーフなら長生きするしなあ」
「いえ、この先の集落には人間の芸術家がいるそうじゃないですか。一度会ってみたいと思いまして」
「それはまた。でも最近、あそこでは病気が流行ってるらしいぞ。しかもドワーフの成人男性が多くその病気で命を落としてるそうだ。今のところ、ほかのやつらは感染があまり見られてないらしいが、用心に越したことはねえ。気をつけろよ」
「病気…ですか」
 シュルヴェステルは流行り病があるということは小耳に挟んではいたが、自分が向かおうとしている場所がまさにその流行り病の真っ只中にあるとは思いもしなかった。
 そうなると、自分がその集落に行っても収穫は無いのではないか。そう思い始めもしたが、今更引き返せはしない。だめもとで行ってみるしかなかった。
「どうにも、神殿の司祭でさえ治せない病気らしくてな」
「そうなんですか」
 馬車が動きを止める。集落へ到着したのだろう。
「着いたぜ。後は好きにしな」
「ありがとうございました」
 シュルヴェステルは馬車から降りて、そして歩き出す。
 まだ見ぬ主人のために。

 その夜、オウルは安らかな眠りについた。ここ最近、そのようなことなどなかった。相当に疲れていたのだろう。外で何が起きようとも起きることはなかった。
 …それが、今夜起こった悲劇の一部始終を見逃す原因になった。
「オウル、大変だよ!」
 そう母親が言ってきた。かなり慌てた様子である。一体全体どうしたのかわからず、オウルはただ母親の言葉に耳を傾けるのみだった。どんなに衝撃的な事実を突きつけられようと、事態はまだオウルの理解の外であった。
「アンデッドが出たのよ。それも、あの芸術家の家から!」
 母親のその言の葉を、オウルは幼い頭で必死に整理する。そして、考えた末に出た結論は…。
「そんな、どうして?」
 《蘇生》の失敗。芸術家は、決して救われぬものとなってしまったのだ。
「…あんた、通りすがりの男に《蘇生》を頼んだんだってね。ところがその男がとんでもないやつだったらしくてね」
「え…?」
「《蘇生》どころか、《不死創造》したみたいよ。そうしてまた一人、また一人とアンデッドを創っているらしいのよ」
 母親のその口調は、どこか怒りを内包していた。それはどういった理由なのか、その顔からは複数の感情が交錯して表れていた。
 子を心配する、親。子を叱る、親。子に呆れを感じる、親。
 三つの親としての顔が、母親の顔に表れていた。
「男のほうは司祭様がどうにかしてくださるそうよ。芸術家のほうは…」
 母親が言い終える前に、オウルは飛び出していった。
 自分のせいだ。芸術家がアンデッドになってしまったのは。そういった責任感に駆られ、オウルは飛び出していった。…自分のせいだ。彼女はそう思わずにはいられなかった。
 自分が事態を収拾させなければならない。自分が、芸術家を…。
 走って芸術家の家へと向かっていくオウルの瞳には、一滴…。

「本当にどうしたの、オウル?」
 何度も何度も呼びかけられて、やっと目を覚ましたオウルが聞いた言葉はその一言だった。起き上がると、そこには自分を見つめる心配そうな目が六つ。
「すーちゃん、みんな…」
 トーマスは「アンデッドに回復魔法使いたあみす」だとか周りの空気に関係なく呟いていて、レフォーナはそれに対して「やれやれ」といった表情をしている。
 見慣れた光景ではあるが、何故かオウルはそれを見て安心した。
「ったく、お前らしくないな」
 ディスティルが言った。どうやら、気絶していたらしい。周りを見ると、レブナントの残骸が山積みにされていた。
 大方、動かなかった自分を、レブナントが斬りかかり、その傷でオウルは気絶したのだろう。レブナントが片付いた後で応急処置をされ、それでもしばらく眠っていたのだそうだ。
「…オウル、やっぱりあんたおかしいよ。いつものオウルなら、あんな奴らに負けないだろ?」
 オウルは答えない。否定すれば無理をしているとわかり、またオウル自身がそれを肯定したくはなかった。それを本能的に感じ取っていた。
「…ステル、どう思う?」
『明らかに無理をしてる』
 シュルヴェステルが答える。オウルとの付き合いが長い彼だからこそ、彼女のわずかな心の揺れさえ見透かせるのだろう。そしてそれは、彼に一つの不安を感じさせた。
「答えたくなきゃ答えなくていい。私だって、ラックたちのことをまだステル達に話してないから。でもこれだけはどうしても聞きたいんだ」
 深く息をつき、クライネはその言葉の続きを模索した。その一瞬の出来事が、長く感じられた。
「…オウルの過去に、何があったの?」
 シュルヴェステルは答えない。その行動の意味するものを、クライネは推測に頼るしかなかった。悟れ、ということか。
 それとも、オウル自身に話させようと思ったのか。単に何もないだけなのか。…いや何もないわけがない。ここまで元気のないオウルは見たことがない。
 元気で、ちょっと馬鹿で…そんな少女がオウルなんだ。今の彼女には、彼女自身ではない何かが乗り移ったような感覚があった。
「…何もないよ。ただ、ちょっと疲れただけ」
 …確かに、元気のないのは疲れていることで説明できるが、それにしてもおかしい。体に異常も見当たらないし、寧ろ傷などない。先ほどレブナントから受けた傷は既に回復している。
「本当に大丈夫。ありがとう、みんな」
「オウル!」
 三人が同時に言った。三人が、同時にオウルに呼びかけた。
「…ん、今知らない声が混じったような?」
「え、あ…。ま、さか…ねえ?」
「でも確かに聞こえたぜ?」
「…そういえばオウルがレブナントに襲われたときもよく似た声が聞こえたっけな?」
 それは彼らの空耳だったのか、それとも…。
「ま、まあ。とりあえず先に進もうぜ。鉄格子も開いたみたいだしな」
 全員それに同意し、彼らは迷宮の奥へと進んでいく。その先に待つものも知らず、ただひたすらに。
 オウルは、ただならぬ胸騒ぎを感じていた。
 …過去が、傷を生む。

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