わたしたちは、突然襲われた。
異形の手、異形の足、異形の頭、異形の目。
それらは、まさしく「鬼」だった。
夜に遅い来る悪魔は、今まさしく夜道を一人歩いていたわたしにその牙を剥いた。
耳をつんざく咆哮。身が張り裂けそうな猛り。見るだけで体中の毛と言う毛が逆立って、体中の穴と言う穴から水分が逃げていくような感覚があった。
鋭く伸びた爪はわたしを切り裂かんとして舞い、その身体はわたしの体を掴み砕くのを心待ちにしているようで、その唇はわたしの臓器の味を想像しているかのようだった。
振り下ろされる腕。偶然か、わたしはその毒牙にかかることはなかった。しかし、脅威は終わっていない。去っていない。
逃げる、逃げる、逃げる。行き場のない道を逝き、逃げ場のない道へ行く。ここは果て無い行き止まりだった。
ついに、わたしはその爪に引き裂かれるのだ。そう覚悟したとき。
――そいつは、現れた。
白銀色に輝く、刃を思わせるような右腕と、黄金色に輝く、盾を思わせるような左腕を持った男。悪魔の攻撃を左腕で受け止めていたその男は、わたしの方を向くと、「よお、大丈夫か?」と声をかけた。
初めはわたしも、ただのバカだと思った。だが、男の様子はただのバカとは明らかに違う何かがあった。……白く輝く銀髪は風に揺れ、金色に輝く瞳は何かをせんとする意思に満ち溢れていた。
「オレはこことは違う世界からやってきた、悪魔の使いだよ!」
その言葉と共に放たれた男の一撃は、悪魔を一瞬で切り裂き、わたしを脅威から救った。……霧となって消えていく悪魔を見つめる男の目は、どこか悲しげだった……。
……それは、現代に現れた妖怪を退治する武装兵器「“殺鬼人”ロットリンク」を操るものたちの、戦いの記録である。なんて厨二なお話を思いつくオレはさっさとレポートをやるべきですよね。
とりあえず、そろそろ少年漫画テイストから離れようか、俺。
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