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支離滅裂なことを書いてるただの自己満足ぶろぐ。 中の人は基本痛いです
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作曲、落書き、睡眠、TRPG、創作
自己紹介:
痛い人



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※話しかけても基本反応ありません。
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ドワーフうぜえ…

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 私は力が欲しかった。それはあの時から、今でも変わらない、私の願い。大切なものを守るための盾となり、またそれを奪わんとするものを切り裂く剣となりたい。
 あの時、私にそれがあったのなら、力があったなら、ラックも、みんなも…。
 私は今でも、自分を責めている。そうしたところで何も変わりはしないが、そうしなければ私の心に出来た穴を隠しておくことは出来なかったからだ。
 私は今でも、その想いを誰にも打ち明けられずにいる。もしかしたら、私は心のどこかで「仲間」と呼べる存在はラック率いる冒険者一行だけだ、と思っているのかもしれない。
 私は今でも、必要以上に人と関わることを恐れている。また失うのではないか、また守れないのではないか。
 どうしても、そう思わずにはいられなかった。
 ああ。何故私はこうも脆いのでしょうか。何故私はこうも臆病なのでしょうか。
 「悔恨」という名の杭は、未だに私の心の奥深くを突き刺して、そこから離れようとはしなかった。

 雨の日。依頼も無く、外に出ることも無いため、剣の稽古は無い。
 だが、リーダーにはクライネの姿を見ることは出来なかった。
「おい、クライネ見なかったか?」
「見てねえな」
 ドワーフの拳士に問いかけるが、彼は知らないそうだ。
 雨の日に外に出るようには思えなかったが、彼は外に出てみた。
 すると、すぐにクライネは見つかった。彼女は冒険者の店の裏口にいた。
「…何してんだ、そんなずぶ濡れで?」
 後ろからの声に、クライネは飛び上がった。リーダーの姿を確認すると、手に持っていたものを後ろに隠す。それが何なのか、既にリーダーにはばれているにも関わらず。
「…別に、何もしてないよ」
 リーダーの顔を見上げる形で、クライネは言った。その姿に、リーダーはかつての仲間の面影を見た。
 ティノルード・ムロリースの一面を。
「嘘つけ。後ろのそれは何だよ」
「……」
「お前が手袋をしてた時からおかしいとは思っていたよ。でも、いつから一人でやるようになった?」
 見破られている。そう実感して、クライネは手を下ろす。右手にはショートソードが握られていた。
「大分前だよ。毎晩毎晩、ここで練習してたんだ」
「…そうか。でもな、それなら初めから言えよ。俺はいつでも付き合うぞ」
 思えばティノルード・ムロリース…ルードもこういう面があった。強情で、意地っ張りな面が。
 クライネを見ていると、ルードとメイルの二人を思わせる面が多々あった。だから、未だに彼は彼らのことを忘れられないでいる。そして、二人を死なせてしまった自分の不甲斐なさに呆れるのだった。
「全く、お前を見てると退屈しないよ…」
「…どういう意味だよ」
「あ、別にな。悪い意味じゃない。お前の両親とお前が、よく似てるってことだよ」
 その言葉の真意が、クライネには理解できなかった。何しろ、彼女は彼女の両親のことなど話にしか聞いていないからだ。
 遠い目で、リーダーは呟いた。
「…本当なら、お前はあいつらが育てるべきだったんだ。ごめんな、本当に…」

「つい最近、この街の近くに魔剣の迷宮が見つかったそうだ」
 その情報を仕入れてきたのは、冒険者の店「さすらいのおヒゲ亭」のマスター。マスターはドワーフの男で、潤沢な髭を蓄えていた。そのマスターの通り名から、店の名が決まったそうだ。
「ほお、魔剣の迷宮か」
 拳士が言った。魔剣の迷宮は、この世界を創造せし三本の剣、またその複製が造る迷宮である。強力な剣ほど、複雑な迷宮を作り上げるとされ、その迷宮の周りに町ができることもある。
 その魔剣の迷宮が、最近になって発見されたというのだ。
「今までに何人もの冒険者が中に入っていったが、未だ彼らは出てこないらしい。そこで、今回俺たちがその調査に出向くことになった」
 リーダーのその言葉に、拳士が唸った。
「しかし、何ゆえ俺たちがライバルの様子なんか見に行かなきゃならねえんだ。そんなことする暇があったら宝でも探してるっつーのに」
「まあそう急くな。調査というのは名ばかりで、今回の依頼に経費以上の報酬は出ないそうだ。代わりにといってはなんだが、迷宮内の宝は俺たちが貰っていくことが出来る。他の冒険者は死んだことにしておけばいい」
「ふん。そういうことなら、経費の分こっちの儲けになるわけだ」
「まあ、問題はそっちじゃない。寧ろ問題なのは…クライネだ」
 リーダーの顔が苦悩に歪む。
「置いていけばいいだろう」
「いたって邪魔なだけだ」
 魔術師と拳士が口々に言う。しかし、彼は彼の考えを述べた。彼らの考えとは対照的な考えを。
「…だが、あの迷宮に入っていった冒険者は誰一人として出てきたことは無い。俺たちだってその例外ではないかもしれないんだ」
 実際、魔剣の迷宮は今までクライネが体験したどんな出来事よりも、ずっと過酷だった。勿論、リーダーにも同じことが言える。
「だったら、尚更…」
「…前にもこういうことがあった。そのときの俺の判断は間違っていたか?」
 それは、ティノルード・ムロリースが殺された時の依頼のことだった。
「あの時、俺がルードを連れて行かなかったら俺たちは死んでたよ」
「でもよ…」
「…俺はあいつに聞いてみるが、あいつが行くというなら俺はそれを引き止めない。ここは、あいつに判断を仰ごうと思う」

 そして、魔剣の迷宮に挑戦する時が来た。
 クライネの答えなど、リーダーには聞くまでもなくわかっていた。絶対に「行く」と行っただろう。案の定、彼女に依頼のことを話したら「行きたい」と言ってきた。
「…まったく、好奇心だけは強いんだから困ったもんだ」
 その時、彼はこう思ったのだった。
 実際のところ、リーダーはクライネを説得する自信がなかったのだ。ルードの時だってそうだった。もともとの性格からだろうか、どうしても彼の望みを聞き入れたくなってしまったのだ。今までも、そうやって彼は損をしてきたのだろう。しかし、これは彼の性だった。どうしようもないくらいに、そうだったのだ。
「いよいよだなリーダー」
「ああ。そして多分、これが最後の冒険になるだろうな」
「へっ、不吉な冗談いいなさんな」
 彼にとっては、それは冗談ではなかった。寧ろ、本気だった。今度ばかりは生き残れる気がしなかった。どんな時でも持ち前の強運で苦難を乗り切ってきた彼が、ここまで弱気になるほど、この迷宮が放つ雰囲気は重苦しかった。
 彼らはその迷宮へと足を踏み入れる。
「我輩は剣。汝ら、我が器を手にせんとするものよ。我が試練を乗り越え我輩の元へと来るがよい」
 彼らの頭の中に、不思議な声が響いてくる。
「ふん。流石は魔剣、ってところか」
 拳士が自らの拳を打ち鳴らして言った。
「無駄口は叩くなよ。行くぞ」
 彼らは迷宮を奥へと進んでいく。途中までは大した罠もなく、問題なく進めた。
 モンスターが出現し出したのは、大分奥へ進んだ後だった。
 ここではその戦闘については省略する。結果だけ言えば、クライネが彼らの足を引っ張った、ということである。
 勿論、そのことについて問い詰められないわけがなかった。
「全く、何でお前はこんな時までそうなんだよ」
 いつもなら言い返していたその罵倒さえ、クライネは切り返すことが出来なかった。彼女もわかっていた。自分の所為で彼らの命が危うく奪われるところだったのだ。
「お、おい…」
「リーダー、今度こそあんたの判断は間違ってたよ。こいつは連れてくるべきじゃなかった。俺はこんなお荷物を抱えて戦えないぜ」
 その言葉は、クライネの心の深い部分を抉り出した。それは自分のミスで落ち込んだ彼女の心に追い討ちをかけるには十分だった。
「それは言いすぎだろ」
「いいや、言わせてもらう。大体こいつの父親だって妻が死んでから腑抜けになっただろうが。親子そろって嫌なところは似てるよ全く。そもそも俺はあいつらがいけ好かなかったんだ。あの腐れエルフどものお陰で、純粋な殴り合いを楽しめなかったからな。いなくなって清々したと思ってたところだ。それが今度はやつらのガキだ。だからエルフは嫌いなんだ」
 拳士のその言葉で、リーダーの心に火が灯った。
 怒りという名の火が。
「…てめえ、今までそんなこと考えてたのかよ。あいつらのことを、そんな目で見てたのかよ」
「こいつら親子が揃って役立たずだからだ」
 その言葉を聞いたとき、彼は確信した。
 自分の判断は間違っていた。
 こいつは仲間ではない。こいつを連れの一人にしたことこそが、誤りだった、と。
「…確かに判断を誤ったみたいだな。本当に置いていくべきは、本当に死ぬべきはお前だったんだ。この毛玉め…!」
 そう言って、手に持った剣を拳士の足に突き刺す。突然のことに、拳士はそれを避けられなかった。そして、痛みと共に怒りが込み上げてきた。
「…てめえ!」
「お前のようなやつは、俺のチームにはいらない。ここで死ぬんだな」
 拳士がリーダーに殴りかかろうとしたとき、横から稲妻が拳士の身体を貫いた。
 魔術師も、拳士を攻撃したのだ。
「クライネのことは別にどうでもいいが、メイルやルードを役立たず扱いは許せんな。一番俺たちとつるんでない奴が、ナマ言いやがる。これだから脳ミソが筋肉で出来てるやつは困るんだよ」
 魔術師がはき捨てるように言う。何かと拳士と行動を共にすることが多かった彼だが、だからこそ拳士が気に入らなかったのだ。
 俺はあんたの決めた通りに行動する。あんたが決めたのなら俺もそう決める。それがメイルに、あんたらに助けられた俺の、恩返しの仕方だ。そう魔術師は思っていた。
「リーダー、あんたが判断を誤ろうと関係ない。あんたの判断が正しいか、正しくないかは俺たちが決めることだ。そして、あんたの判断はいつだって正しかったよ」
「…すまないな」
 彼らは気付かなかった。
 事の発端となったクライネ・フェーンハフトがその場から消えていることに。
 そして、気付いた頃には遅かった。

 薄暗い廊下を、クライネ・フェーンハフトは一人で歩いていた。
 この魔剣の迷宮の中、一人で歩くことは危険極まりないのだが、今の彼女にはそのことは考えられなかった。寧ろ、あの集団と一緒にいること自体が、今は嫌だった。
 俺はお荷物なんだ。いたって邪魔なだけなんだ。
 その思いが、彼女の心をがんじがらめにする。その思いが、彼女の思慮を浅くする。
 それだけではない。周りに対する注意力さえ、その思いが、言葉が、奪っていった。
 彼女がそれを痛感するのは、後ろから魔物が襲い掛かってきたときだった。
 牙が、彼女の背中を抉り出す。もう少し反応が遅かったら、彼女は一撃で死んでいたかもしれない。
 逃げるか、それとも戦うか?
 問題はそこではなかった。寧ろ、どうやって生き残るか、それが問題だった。
「妖精たちよ、お願い…!」
 魔物の攻撃を避けながら、彼女は魔法を唱える。
 魔物はクライネに殴りかかった。その攻撃が彼女に命中した…と思われたが、風のヴェールに守られた。
(こいつを転ばせるだけでいい…転ばせるだけで!)
 土の妖精が、魔物を転ばせる。その隙に、彼女は走った。しばらくは魔物が来ないであろう場所へと。
 しかし甘かった。他にも魔物はいたのだ。
 今、彼女には魔物の攻撃を避けるだけの力などない。風のヴェールもこの状態では大した効果をもたらさない。しかも彼女は今、壁に身体を預けている。
 万策尽きた、と彼女は思った。
 死への恐怖か、それとも別の何かかは分からないが、彼女は目を瞑る。
 だが、いつまで経っても痛みは伝わってこない。…背中の傷は痛むのだが。
 目を開けてみると、そこには見慣れた大きな肩があった。
「…ラック!」
「よお。全くお前は、いつまでも迷惑かけやがるな…」
 リーダーの背後で、何かが倒れる音がした。恐らくは魔物だろう。しかし、彼女には分からなかった。何故自分が助けられるのか、なぜそこまで自分は守られなければならないのか。
 彼女には分からなかった。何故自分がこうも弱いのか。
 今までにも、彼女はリーダーに助けられたことがあった。勿論、彼女自身も自立しようと奮闘してはいるが、どうにも空回りしていた。
「…安心するのはまだ早いぜリーダー。こいつは仕留めたが、まだ二、三匹いやがる」
 魔術師が言った。
「ああ、分かってる」
 そう言って、リーダーは振り返る。その時、彼女は見た。
 リーダーの背中から、血が流れていた。それも…大量に。
「…主さん、あんた怪我してるじゃないか。なんでそんなになってまで…。それにあの毛むくじゃらは…?」
 毛むくじゃら、クライネはあの拳士をそう呼んでいた。
「ああ、お前が俺たちの仲間だからだ。…あの毛玉は、今頃は死んでるよ」
 …仲間?
 クライネにとって、その言葉は意外だった。いつも守られてばかりで、足を引っ張ってばかりで、挙げ句の果てに自分たちを殺しかけた奴を、仲間?
 魔物が数体、こちらを向いている。今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。
「…分が悪いな」
「そうだな、リーダー」
「…すまない、俺の力が足りなかったばかりに、ルードやメイルを死なせてしまって。本当は、俺の判断はいつも間違っていたんだ。そして今回も、俺は判断を誤った。駄目だな、俺は。リーダー失格だ」
 傷の痛みに、リーダーがよろめく。リーダーの肩を、魔術師が支える。
「言ったはずだぜ、あんたの判断が正しかったかそうでないかは、俺たちが決めるとな。なあクライネ、お前はリーダーの判断が間違っていたと思うか?」
 クライネは首を横に振る。それは、リーダーの判断が正しかった、という意味だったのだろう。
「…このままじゃ、俺たちは全員ここで死ぬだろう。だから、俺は一人でも生き残る道にかけようと思う」
「それがあんたの選んだ道なら、俺はついていくぜ」
 その「一人でも生き残る道」とは何か、クライネには分からなかった。いや、正確には「誰が生き残るべきなのか」分からなかった。自分が生き残るべきではない。そう思っていたこともあったし、リーダーに生きていてほしいと思っていたこともあった。
「…俺たちが魔物を引き付ける。クライネ、その隙に逃げろ」
 クライネが問いかける前に、リーダーが言った。
「でも!」
「生憎だな、俺はこのザマだ。それに、俺たちが逃げ帰ったところで、先は長くない。だがお前は違う。お前はこれから、何百年と生きていくんだ。お前にはまだ未来があるんだ」
「みんな生きて帰ることは出来ないの?」
 今この場にいる誰よりも、そのことをクライネは望んでいた。それが無駄なことと分かっていても、心がそれを拒んでいる。
「…じゃあ聞くが、お前は手負いの男を背負ってこの迷宮を抜け出せると思うのか。お前は一人であの魔物どもを倒せるというのか。違うだろう、お前はまだ子供だ。大体、お前がここに来ることだって、本当は望んじゃいなかった」
「…やっぱり、俺はお荷物なんだね」
 「お荷物」。それは、クライネをラック率いる一行から離れさせ、またその一行を壊滅させるに至らしめた言葉。…最も、その言葉を使ったドワーフは、もうここにはいないが。
 その言葉を聞いて、リーダーは…ラックはふん、と鼻を鳴らした。
 魔物が襲い掛かってくる。ラックは魔物の攻撃を剣で受け止め、魔術士は呪文の詠唱を始める。
 この状態では多勢に無勢。しかし二人に対して、クライネに出来ることは限られすぎていた。改めて、クライネは自分の脆弱さを痛感させられた。
「ああ、確かにお前はお荷物だよ。俺達には重過ぎる。だけどな、背負いがいのある荷物だ。誰がお前を降ろして前に進めるかよ、誰がお前を見捨てるかよっ…。お前は俺達の大切なモンだ。だからお前は生きろ、生きてくれ…!」
 ここから逃げ出したいと思う気持ちと、二人の力になりたいと思う気持ちが反発しあって、クライネはここから動けなかった。
「何してる、早く行け」
 魔術師が言う。
「いいかクライネ、これが俺の、お前の主としての最後の命令だ。走れ!」
 その言葉で、全てのものが切れた。迷いも、戦闘の均衡状態も、全て。
 そして、彼女は走り出した。

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ドワーフ死ね。氏ねじゃなくて死ね。

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