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支離滅裂なことを書いてるただの自己満足ぶろぐ。 中の人は基本痛いです
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戸之
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作曲、落書き、睡眠、TRPG、創作
自己紹介:
痛い人



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※話しかけても基本反応ありません。
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本来ならここまでが「受難曲」の容量だった。


…どうしてこうなった!



 《穢れの刻印》。それは、与えられたものに絶対の力をもたらすと共に、絶対の恐怖をももたらすものだ。
 放っておけば、それは不浄なるもの…アンデッドを生み出す。
 ディスティル・ロッドにとっても、彼の目の前にいるドレイクにとっても、アンデッドは忌むべきものだった。
 だからこそ、ドレイクは《穢れの刻印》を一刻も早く解除しておきたかった。
 しかし。
 それを与えられたものが下した決断は、自我を失い、ドレイクに支配される、というものだった。
 ドレイクはそれを実行する…はずだった。
 事態は、彼が想定した方向とは全く異なる場所に向かってしまったのだ。

 見る見るうちに光はその強度を増していき、部屋全体を満たしていく。やがて、痣が熱を発するようになり、ディスティルの身体を熱していく。
「ぐあああああ!」
 耐え難い苦しみが、彼の身体を駆け巡る。《稲妻》に貫かれた痛みとは違う。《火球》に焼かれる苦しみでもない。それは、もっと異質な苦しみであった。
 自分でも意識せずに、ディスティルは叫んでいた。
 これが、自分が自分でなくなる恐怖なのか…?
 ディスティルの脳内で、様々な人の姿が現れ、また消えていく。
 楽しかった思い出や、苦い思い出、中には思い出したくもないものまでが、頭の中で目まぐるしく駆けていく。
 それは周りから見れば一瞬だったが、ディスティルにはそれが永遠のように感じられた。
 物心ついた時からの様々な思い出、陰惨な記憶、思い出したくない、忘れてしまいたい幼い頃の姿。それらの様々な過去が、遠ざかってはまた近付いていく。
 ”年輪国家”アイヤールの赤砂領で生を受け、忌み子として育ちながらも、「力」を示すことでその存在を確立していった、幼い日々。
 各地を放浪し、自身の生まれに絶望を感じ、”始祖神”ライフォスの教えに救いを求めた、少年の日々。
 同じライフォス神殿の過激派によって捕らえられ、独房に放り込まれた、陰鬱な日々。
 そして…今の仲間、冒険者としての仲間と出会った、忘れ得ない日々。
 現在に至るまでの記憶が、時の流れをなぞるように駆け抜けていき、それはディスティルの頭の中を周回した。
「おおおおおおおおおおおお!」
 痛みと記憶の奔流が、ディスティルを変貌させていく。
 少しづつ角は肥大化し、肌は青白くなっていく。さらに、背中に刻まれた《穢れの刻印》から瘴気が噴き出し、双眸は赤く光る。口には牙が生え、腕は筋肉が引き締められ、爪は鋭さを増した。
「ウオオオオオオオオオオオオッ!」
 ディスティル・ロッドであった何者かは、再び咆哮を上げた。
 その様に、ディスティルに《穢れの刻印》を与えた張本人たるドレイクですら怯んだ。
 一瞬のことだった。
「グルアアアアアアアアアアアア!」
 目にも留まらぬ連撃が、ドレイクの身体全体を貫いていく。重く、それでいて早い一撃。加えて、その拳は魔力を纏って放たれていた。
 一撃、二撃と、ドレイクの体力を、化け物は奪っていった。
「な…に…ッ?」
「グガアッ!」
 ズンッ! ズンッ! ズンッ!
 鈍く、そして太い衝撃が、立て続けにドレイクの身体を打つ!
「こいつ…、俺の《穢れの刻印》による制御を受け付けないのか!」
 《穢れの刻印》は元々、人族に対して行使するもので、対象の意識を完全に奪い、意のままに操ることを目的とした魔法だ。それは、対象を狂戦士として覚醒させる力までをも持っていた。
 本当にディスティルが《穢れの刻印》を受けたのならば、ドレイクに対して従順になるはずだった。
 しかし、今の化け物はそんな様子など全く見えない。
 悦び、愉しみ、そうした感情が、ただその拳に乗せられていた。
 それは、今まで彼が倒してきた、蛮族と同じような感情であった。虐殺、姦淫、悪辣の限りを愉しみ、力によって世界の覇を握らんとする彼らと。
 …いや、違う。そのような輩は人族にもいるし、蛮族にですら高潔な精神の持ち主はいる。
 だがディスティルは、もはや本能のままに闘うことしか知らない獣だった。人族でも、蛮族でもない。もはや、異種の魔物だ。
 ドレイクは槍を構え、化け物と戦闘する体勢に入る。
 十文字の槍が、化け物の攻撃を受け流す。それは扱いの難しい槍だったが、ドレイクはそれを片手で軽々と使っていた。しかし、そんなドレイクでさえ、化け物の攻撃に防戦一方だった。
 ドレイクは槍を頭の上方へと持ち上げ、プロペラのように回転させる。それは化け物にダメージを与えることこそ無かったが、距離をとることに成功していた。同時に、ドレイクに付いた傷が塞がり、出血は止まる。
(俺に《死傷癒し》を使わせるとは…!)
 《死傷癒し》は、同じ神聖魔法である《傷癒し》の最上位魔法である。その癒しの力は《傷癒し》の数倍にも達する。
 それを使わせるほど、化け物の一撃一撃は重かったのだ。
 ドレイクは大きく息を吸い、精神を集中させる。
「はあ…!」
 ドレイクの体から、オーラのようなものが一瞬表れ、消える。ドレイクの双眸に一本の筋が現れ、腕と足の筋肉はいっそう引き締まる。
(俺が御すことが出来ないほどの力を持っているとはな…惜しいが、殺さなければ俺がやられる)
 ドレイクと化け物は、再び組み合った。

「おい、茶髪のエルフ」
 ホイットが、クライネを指差して言った。
「腰の後ろに鞘があるってことは、お前は剣ができるのか?」
 それを聞き、クライネは正直な話、驚いた。
 確かに腰の後ろに鞘はある。だが、レイピアが折れたために、それは収めるものを失くしてしまっていた。
 クライネ自身、第一層に置いてきても良かったと思っていた。
 何に驚いたのか、と言えば、ダークトロール…ホイットがそのことを見抜いたからだった。
 鞘はマントの下にあり、更に足に隠れて見にくいはずなのに、ホイットは難なくそれを見抜いた。…流石はトロール族のエリート。観察眼も一流ということか。
「まあ、少しはできるよ」
 ホイットはやはり、と言った顔をした。
「あんたも相当強いんじゃない?」
「何故そう思う?」
「だってあんた、私を一目見ただけでこの鞘を見つけられたんだろ。そんなことが出来るやつが、弱いわけが無いからさ」
「残念だが、生憎と好みの女以外は女の顔を覚えるのが苦手でね。観察能力も女に対してはそれほど無いんだ」
 ホイットは二振りあった剣のうち一振りを鞘から抜く。
 それは、片手でも両手でも扱える剣。バスタードソードだった。
「そんなこと言われて、素直に喜んでいいのかな?」
 クライネは身構える。剣が無い状態では、どうにも接近戦などできそうに無い。
「さあな。でもこれだけは言えるぜ」
 ホイットは抜き身となった剣を放り投げた。きれいな放物線を描いて、それはクライネの足元に剣先から落ち、床に突き刺さる。
「強い女は、俺は嫌いじゃない」
「そう、ありがとう」
 もう一振りの剣を抜き、ホイットは構える。
「さあ、抜きな。戦おうじゃないか」
 そう促すホイットだったが、クライネはそれを抜こうとはしなかった。彼女が何を考え、何を思っているのか、ホイットには分からない。
 蛮族という種は、人族の心の機微など到底分かるものではない。
「…普通ならここで『おう!』とか『いくぜ!』とか言うんだろうけどさ、どうにも気が乗らないんだよね」
 何故だ。
 ホイットはそう思ったが、口には出さない。クライネ自身ですら、その理由が漠然としていて、つかみ切れていないのだと感じたからだ。
「今まで戦ってきた蛮族は、話が通じない奴らばっかりで、殆どのやつが問答無用で襲ってきてさ」
「そうだな、それが下位蛮族。力も無い癖に悪知恵ばかり働く、害虫のようなやつらだ。特に妖魔などはいけ好かない連中も多い」
「…私は、あんたみたいに話のできるやつとは、出来れば戦いたくないんだ」
「だが、戦わなければこの先へは進めぬぞ。ここで立ち止まれば、お前の望みは叶わんよ。お前は力が欲しいのだろう?」
 クライネは、苦虫を噛み潰したかのような表情をしていた。
 今まで、蛮族は悪い輩、汚い奴、狡猾な種、そういう偏見にも似た観念が彼女にはあった。しかし、今対峙しているこのトロールからはそういった印象は全く受けない。
 寧ろ、高潔な精神、強靭な肉体、それらを持ち合わせた武人という印象を受ける。
 自分が持っていた観念とはあからさまに違うその蛮族の態度に、クライネは戸惑っていた。
「確かに力は欲しい。でも…」
「力は、何かを守るため、さらなる高みへ登るためにあるものだ。その対象は千差万別であるにしろ、目的の無い力は存在しない」
 突然の言葉。
 戦おうとしないクライネに対する、ホイットなりの叱咤激励なのだろう。
「力を振るうことに躊躇する必要は無い。お前の信念を忘れない限りはな」
「…ありがとう。お陰で戦えそうだよ!」
 クライネは地面に刺さった剣を抜き、ホイットはクライネめがけて走り出す。意外と剣は軽く、クライネの筋力に合わせた調整をされていた。
 クライネとホイットは、お互いの剣をぶつけ合った。
「…なんてことになってるけど、お前さんはどうするつもりだい?」
 そう言ったのはゲーステ。彼の眼前にはレフォーナがいた。
「別にどうもしないわ」
 レフォーナは冷たい口調で言った。
「案外キツイね、お姉さん。ま、俺もだけどよ」
「別に、それほどでもないわ。一度や二度の《蘇生》が怖くて冒険者なんかやれないもの」
 《蘇生》をする、ということは魂が穢れる、ということである。一般には忌避されるものであるが、冒険者にとってはそれほどではない。
 しかし、冒険に失敗して死んだ冒険者の中にも、《蘇生》を拒否するものがいる。それを差し引いても、穢れが怖くて冒険ができないというのは、言い得て妙ではあるが。
「そりゃあ頼もしいことでなあ」
「それよりも、あなたのお兄さんの方の心配をしたらいいんじゃないかしら?」
「別に。やつが死にそうになったら、俺が直々にとどめを刺してやる」
「…残念だけど、あなたはお兄さんより先に死ぬわ」
 レフォーナの手が、紋章を描き出す。
「真、第十四階位の攻。断空、斬刃――次元斬」
 レフォーナの腕から、強大なマナが作り出した刃が出現し、レフォーナはそれをゲーステに振るった。
 刃の軌跡が、そこだけきれいに切り取られたかのように黒く残り、刃に切り裂かれたゲーステは、その軌跡に吸い込まれていく。
「残念だったわね、最期までお兄さんに勝てなくて」
先ほどまでそこにあったものを思い浮かべながら、レフォーナは呟いた。
「…さて、あとはのんびりしましょうか」
 レフォーナは、もう一体のトロールに目もくれずにその場から立ち去って行った。そのトロール…ホイットも、レフォーナには興味が無いようであった。

「オオオオオオオオッ!」
 獣が咆哮を上げ、ドレイクへと殴りかかり、ナックルダスターと十文字槍が激突し、大きな音を立て続けに鳴らす。
 力はドレイクのほうが上。しかし、手数の分だけドレイクが不利でもあった。加えて、本来、槍はこうした相手を想定して作られていないことが、さらにドレイクの不利を助長していた。
 とは言うものの、武器を持っている分リーチはドレイクのほうが有利。普通ならこの違いすぎる攻撃範囲が槍術士の利点であったが、この化け物はまるで、自分が傷つくのを恐れていないかのようで。
 それが、ドレイクの調子を完全に崩す要因になっていた。
「くっ…ダルクレムよ、俺に力を!」
 言葉と同時に、ドレイクは十文字槍に魔力を込め、化け物めがけて突き出す!
 化け物はそれを避けようともしなかった。
「カウンターできるものならしてみろよ!」
 ドレイクの放った魔力撃の軌跡が閃光となって、化け物の目を潰す。これで奪える視力は一瞬のみのものだが、その一瞬さえ見逃してくれれば、あとは確実にこの一撃が当たる…はずであったが。
 化け物はドレイクが突き出した槍…それも穂先を鷲づかみにして受け止めた。相当のダメージが来たらしく、左腕の半分が焼け爛れていたが、化け物はそんなことに構いもせず、ドレイクの攻撃を受け止めたのだ。
「まさか…《聖戦》の効果をお前も受けているというのか!」
「グルガアアアッ!」
 再び咆哮を上げ、化け物は魔力を込めた右の拳を叩き込む。
 魔力撃をまともに食らい、ドレイクは十文字槍を手放して吹っ飛んでしまう。翼で羽ばたき、どうにかバランスを取ったが、致命的なミスを犯してしまった。
 それも、ドレイク一族にとって生死に関わるミスを。
「しまった、俺の槍が…!」
 卵生であるドレイクは、生まれた際に自分の魔力が込められた武器を持っているとされる。
 そして、ドレイクという種は、その武器に込められた魔力を取り込むことで、自らを竜の姿へと変身させることが出来るのだ。
 そういう関係もあって、自分の魔力の結晶たる武器を破壊されれば、それはドレイクにとって自身の魔力の殆どを失うということで、結果的にそれが意味するものは「死」である。
 だからこそ、致命的なミス。だからこそ、ドレイク一族が犯してはいけないミス。
 化け物は十文字槍に手刀を放とうとする…が、手刀と槍が接触する瞬間、槍の姿が消える。
 同時に、閃光と強風。
 化け物が、閃光と強風の発生源を探そうとするが、それはすぐに見つかる。
 ドレイク。
 彼が、いぶし銀のオーラを纏って、そこに佇んでいた。
「ったく、着物と籠手を台無しにしたくないから、出来れば竜にはなりたくなかったけどな…」
 着物を抜いで、次にドレイクは手馴れた動作で籠手を外す。一見すれば、それは隙だらけであったが、強風と閃光、そして立ち上るオーラが、十分に彼を狙い打つのを妨害していた。
「本気出してやるよ。かあっ…!」
 いぶし銀の光を放ちながら、ドレイクの身体が変化していく。衣服は破け、肌は銀色に輝く鱗に覆われ、尻尾が生え、翼は巨大化し…。
 気付いたときには、それは竜だった。体長は七メートルを超え、巨大な翼と巨大な尻尾、いぶし銀の鱗を持つ優美な存在だった。
 ドレイクは口を大きく開き、ブレスを放った。純粋なエネルギーの奔流を受けては、いくら化け物とはいえ、少しはダメージを受けないわけが無い。
 しかし。
 化け物は、それすら避けようとはしていなかった。
(何を考えている、お前は…!)
 マナの鉄砲水が化け物を飲み込む。その衝撃に化け物の周囲の物質が昇華していくというのに、化け物はまるで平気だった。依然として、赤い双眸をこちらに向けているのみ。
 ドレイクは驚愕した。
 まさか、いや、何故だ。何故エネルギーブレスを打ち消せる。あれはマナとの反応性が悪いグラスランナーにもダメージを与えるものだというのに、何故この男は無傷なんだ。
 不意に、ディスティルの手から煙が出ているのが分かった。
 どうやら、エネルギーブレスと同等の力を持つ魔法を反対方向からぶつけて、マナの持つエネルギーを全て消費させたらしい。その反動か、右手には消しきれなかったエネルギーブレスと、押し戻された《聖弾》か何かによる影響が出たらしい。
 だが。
 エネルギーブレスは、竜形態のドレイクが放てる、最大級の攻撃。それを打ち消せる威力の魔法はそうそうあるものではない。
(化け物が…)
 ドレイクですら、それに対して、そう評価するしかなかった。それほどまでに、それの力は強大だったのだ。
 自分が与えた力に殺されることになるかもしれんな…。
 あの武器があれば…自分の本来の武器があれば、この化け物などはいとも簡単に御せるというのに。
 ドレイクはそう思った。
 両の翼で、化け物を打とうとするが、それらは容易に避けられる。そして、反撃に放った化け物の拳は、ドレイクの右翼に大穴を開けた。
「ぐおっ!」
 一瞬だけ怯むが、すぐに体勢を立て直し、ドレイクは尻尾の先端を化け物に向ける。
(食らえ、『勝利をもたらす槍』を…!)
 ドレイクの尻尾から、鏃のようなものが四本飛び出し、化け物へと一直線に飛ぶ。化け物はそれを難なくかわす…が。
 鏃はある一点で四本全てが衝突し、拡散する。
 化け物はドレイクの頭を潰そうと飛び掛り、魔力を纏った拳がドレイクを打とうとする。…が、それより一瞬早く、化け物は攻撃を受けていた。
 鏃の一本が化け物の肘から掌にかけてを貫き、辺りに化け物の血をばら撒く。続いて残りの三本が、両足の腱、左腕の関節を貫き、血飛沫を上げる!
「グゥ、ウゴアアアアアアア!」
 化け物はいっそう強い咆哮を上げる。
(かわそうとしても無駄だ。『勝利をもたらす槍』は確実に相手を打ち抜く)
 地面に叩きつけられ、化け物は辺りを血溜まりにする。
 聞くに堪えないうめき声を上げながら、化け物は床を転がり、立ち上がった。
「オオオオオオオオ…!」
 そして、再びの咆哮。
(既に知能すらない、か…。これだけの力、失くすのは本当に惜しいのだが…)
 ドレイクは手で紋章を描き始める。
(操、第十五階位の呪。邪雲、毒焔、変化――死魔光来)
 操霊魔法の中でも最高位の魔法、《死魔の雲》。この魔法によって、漆黒の雲が辺りを包んでいく。
 この雲は、自身を吸い込んだあらゆるものを死滅させ、滅びを呼ぶ。いくら頑強な肉体の持ち主とて、この雲の前では無力。
 しかし化け物は、既に《死魔の雲》への対抗策を講じていた。…いや、そのような狙いがあったわけではない。単なる偶然だ。
「ダアアアアアアアアッ!」
 《致死爆撃》。
 ダルクレムの神官でも最高位に位置するもののみが使えるその魔法が、完成しかけた《死魔の雲》を払い退けたのだ。それと同時に、強大な衝撃波を真正面から受けて、ドレイクは吹っ飛んだ。
 更に、化け物は咆哮を上げる。
 角や痣、そして背中に刻まれた《穢れの刻印》から、瘴気が吹き出す。まるで、沸騰したやかんの水のように、蒸気機関車の蒸気のように、間欠泉のように。
 その姿はもはや化け物ではない。
 悪魔であった。

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